便りの終焉と御礼
理想社会の実現を求めることにおいては、二つの系列があると思います。一つは、「生存-肉体の糧-欠乏のニヒリズム-水平の次元」であり、もう一つは「生活-魂の糧-過剰のニヒリズム-垂直の次元」です。そして、前者の系列において求められる理想社会をアルカディア、後者の系列のそれをユートピアと私は理解しています。
おそらく一般的に理想社会と言えば、アルカディアを意味するでしょう。すなわち、パンの問題が根源的に解決されて、もはや生存に困らぬ社会です。しかし、そうした理想社会は水平の次元だけでは実現できず、否応なく垂直の次元を必要とすると私は考えます。言い換えれば、パンの問題はパン以上の問題と相即しており、両者を切り離して考えることはできないということです。少なくとも、アルカディア以上のユートピアを求めることは不可避であり、そこに「真の新しさ」があると思われます。
尤も、アルカディア以上のユートピアと言っても、それはアルカディアを否定することではありません。むしろ、実在する理想社会の形態としては、アルカディア以外にはないでしょう。ユートピアは実在するものではありません。ユートピアの「場」とは、言わば「絶対無の場」であり、具体的にはアルカディアを真に実現させる「存在の力」に他なりません。
さて私は、上記のような考えに基いて、自分が「ユートピア数歩手前」にあると判断した新しき村で理想社会の実現を摸索してきました。しかし、これまでの便りで明らかなように、私の摸索は依然として「ユートピア数歩手前」のままで足踏み状態が続いています。実に情けなく、醜悪なことだと思います。そして、今後も新しき村において「新たな一歩」を踏み出すことが期待できず、また「新生会」も実質上の解消が確認された今、この便りを続けることにも意味がなくなったと思うに至りました。もう一度、最初から勉強し直して、次回は「ユートピア一歩手前」くらいから真に実践的な便りを送ることができるようにしたいと思っています。わずか半年足らずの間でしたが、私の拙い便りをお読み下さった皆さんには心から御礼申し上げます。どうもありがとうございました。