自覚的生産者 | 新・ユートピア数歩手前からの便り

自覚的生産者

新しき村のO氏は、数年前に村の稲作責任者になって以来、ずっと無農薬・無化学肥料による米づくりに挑んでいます。それ以前の責任者の下では、慣行農法に従って渋々農薬などを撒布していましたが、その前任者が離村したのを機に有機栽培に切り替えたわけです。余談ながら、村では直接の責任者の離村ということでもなければ、なかなか新しい試みを始めることはできないでしょう。おそらく彼も、村の米づくりのヴェテランである前任者の離村ということがなければ、無農薬・無化学肥料栽培に挑戦することはできなかったと思います。


何れにせよ、彼は今、自分の理想とする米づくりの実現を目指して悪戦苦闘しています。それは主に草との戦いで、除草の手段としては水田に糠を撒く程度で後はひたすら草取りの日々が続きます。その労力たるや実に大変なもので、生来怠け者の私にはとてもできないことだと毎年痛感しています。


何故彼は、そんな苦労までして無農薬・無化学肥料栽培に固執するのでしょうか。或る時、彼にその理由を尋ねると、「別に消費者に安心で安全な米を提供しようなどということは考えていない」という応えが返ってきました。彼によれば、「ただ生き物を殺したくないから」というのが農薬を使わぬ主な理由なのです。


この点においては徹底しており、彼は自分が風邪をひいても、決して薬を服用しようとはしません。つまり抗生物質で菌を皆殺しにすることなく、ただ自分の身体の抵抗力を信じて、何日も咳をし続けるのです。また捨て犬の治療に何万円も支払ったり、とにかく生き物を大切にするのです。


こうした姿勢で米づくりに取り組むO氏は間違いなく「自覚的生産者」であると言えるでしょう。しかし、そこには様々な問題があると思います。