エピローグ(0/3)






・・・夢を見ていた。


商店街。


路地裏を抜けた場所。


あけぼの神社。


小さな男の子が見える。


頭には、電気スタンド。


あれは…僕だ。


子どもの頃の僕。


キャッチボールをしている。


・・・誰と?


ボールを投げる。


それを受け取った相手は…


僕より少し大きな、子ども。


男の子?


いや、女の子かもしれない。


そして…その子の頭にも


電気スタンドが乗っていた。


二人の、電気スタンドを乗せた子どもたち。


彼女がボールを投げる。


僕が受け止める。


その時…境内に一陣の風が吹いた。




もう一人、別の人間が現われた。




今度は、大人だ。


その頭にも…やはり、電気スタンドが乗っていた。


怯える二人の子どもに向かい、言葉をかける。




「アマテラスの使命を受けし二人の子ども達よ。


 今、目覚める時が来た。


 私と共に来るのじゃ。


 そなた達の生まれてきた意味を教えてあげよう」




そこで、画面は途切れた。





(エピローグ0・END)

(13)






――ははは。面白い。


本当に面白いやつらだ。




違う誰かの心が、僕の中に流れた。




ウタマロだ。




――電気スタンドの少年よ。


まさか、こんなかたちで再び会うことになるとは…


 
僕は…ずっと…


心の中に、復讐の火を燃やすことで生きてきた。


その感情の正体が何かすら分からないまま…


それだけが…僕の生きる理由だった。


しかし…なぜだろう。


お前の光…この光が、僕の心を解かしていく。


怨みに固まったこの心が…ほどかれていく。


この僕が、仮にでも人を許す心を持つことができるのか…


それは分からない。


しかし…全ては、ここから始まるのだろう。


今…新しい世界が始まる。


ありがとう。天野ハルキ…


さらばだ、頭から電気スタンドのはえた少年よ。


いつか…また会おう。




そして、ウタマロは雲の中から消えた。




――お兄ちゃん。


お兄ちゃんの頭…


正直に言ったら、ずっと恥ずかしいと思っていたけど。


今は、ちょっとだけ、カッコいいって思うよ。


お兄ちゃん。


私も料理、母さんから習おうかな。


だし巻き玉子!練習するからね。


お兄ちゃん。先に、家で待ってる!




ちなつだった。


闇の雲が消えていく。


人々の心が、あるべき場所へと戻っていく。




そして、その最後に僕が出会ったのは…母さんだった。


母さんの心が流れる。




――おめでとう。ハルキ。


あなたは…立派に成し遂げた。


あなたの頭は、他の人とは少し違うかもしれないけれど…


それは不幸な違いじゃあない。


お母さん、今もこの頭が大好き。


そのこと…これからも、忘れないでね。


待ってる。


元気に、帰っておいで。




ハルキ、愛してる。






僕の心が、頭の光が、世界を照らす。


人々の闇が作り出した雲は、全て消えていた。





(つづく)

(12)





「ごごご、ごめんなさい!


 お願い!もうやめて!」




闇は、はなみのパンチによってボコボコにされてしまった。




「やっと分かったようね」


はなみは拳をおろすと…静かな口調で言った。




「確かに…あなたはたくさん傷ついてきたのかもしれない。


 でも…たった十年かそこら生きただけの命でも…感じる心は同じ。


 痛みを感じる心は、何も変わらないと思う。
 


 私はずっと…生きてくのはつらいことばかりだと思ってた。


 愛されなかった悲しみも、痛みも、さみしさも…


 あなたが感じたものは、


 私自身が感じてきたものでもあると思う。


 あなたがたとえ認めなくても、私たちは理解し合えると思う。


 だから、とびきりの愛をあげる。


 この電気スタンドの光…


 たしかに、あなたに届いているでしょう。


 これが、あなたへ贈る最後の愛の光。
 
 この光が、あなたを満たしてくれるから。


 あなたの心の空白を、満たしてくれるから。


 もう、こんな他人に迷惑をかけるようないじけ方はしないで。


 分かった??」




――は…はい。




「よし。じゃ、許してあげよう。


 天野くんに感謝しなさいよね。


 天野くん。お願い。


 これがたぶん…本当の終わり」




「う…うん」




僕の頭が、柔らかな光を放つ。


輝きが辺りを照らす。




彼の心が、もう一度流れた。




――まさか、こんな展開になるとは…


思ってもいなかった。


“全てのものが光り輝く世界に、闇は生まれない”。


こんなことを言う奴がいるとはね。


でも…君たちが正しいのかもしれない。


君たちの世界。見せてもらうよ。


君たちの…勝ちだ。




「分かれば、よろしい。にひひ」


はなみが笑った。


それに応えるかのように…


彼も、笑った、ような気がした。




何かが崩れる音が聴こえた。


闇が堅く閉じていた心が開かれる音。


たくさんの人の心が…闇の雲に吸収されていた、


多くの人の心が、解き放たれていく音だった。






「は…はなみちゃん。すごかったね」




「何言ってるの。


 言ったでしょう。


 私の役割は、天野くんの心の中にあることを形にすること。


 答えは全部、あなたの心の中にあったのよ」




そう言って、はなみは二ッと白い歯を見せた。





(つづく)