(12)
「ごごご、ごめんなさい!
お願い!もうやめて!」
闇は、はなみのパンチによってボコボコにされてしまった。
「やっと分かったようね」
はなみは拳をおろすと…静かな口調で言った。
「確かに…あなたはたくさん傷ついてきたのかもしれない。
でも…たった十年かそこら生きただけの命でも…感じる心は同じ。
痛みを感じる心は、何も変わらないと思う。
私はずっと…生きてくのはつらいことばかりだと思ってた。
愛されなかった悲しみも、痛みも、さみしさも…
あなたが感じたものは、
私自身が感じてきたものでもあると思う。
あなたがたとえ認めなくても、私たちは理解し合えると思う。
だから、とびきりの愛をあげる。
この電気スタンドの光…
たしかに、あなたに届いているでしょう。
これが、あなたへ贈る最後の愛の光。
この光が、あなたを満たしてくれるから。
あなたの心の空白を、満たしてくれるから。
もう、こんな他人に迷惑をかけるようないじけ方はしないで。
分かった??」
――は…はい。
「よし。じゃ、許してあげよう。
天野くんに感謝しなさいよね。
天野くん。お願い。
これがたぶん…本当の終わり」
「う…うん」
僕の頭が、柔らかな光を放つ。
輝きが辺りを照らす。
彼の心が、もう一度流れた。
――まさか、こんな展開になるとは…
思ってもいなかった。
“全てのものが光り輝く世界に、闇は生まれない”。
こんなことを言う奴がいるとはね。
でも…君たちが正しいのかもしれない。
君たちの世界。見せてもらうよ。
君たちの…勝ちだ。
「分かれば、よろしい。にひひ」
はなみが笑った。
それに応えるかのように…
彼も、笑った、ような気がした。
何かが崩れる音が聴こえた。
闇が堅く閉じていた心が開かれる音。
たくさんの人の心が…闇の雲に吸収されていた、
多くの人の心が、解き放たれていく音だった。
「は…はなみちゃん。すごかったね」
「何言ってるの。
言ったでしょう。
私の役割は、天野くんの心の中にあることを形にすること。
答えは全部、あなたの心の中にあったのよ」
そう言って、はなみは二ッと白い歯を見せた。
(つづく)