Disney+で配信されている「将軍」がとても評判がいい。

真田広之さんが主演しプロデュースもされているそうだ。

何でも本物の時代劇を世界にら見せたいとのことで、準備期間だけで7年も費やしてきたという。

真田広之さんにとって、それだけ「将軍」への拘り、思入れが強いようだ。

海外の作品にも多く出ておられる真田さんは、役者として、西洋の人たちに日本の文化を正当に理解してもらいたいという思いと、日本への恩返しという意味もあるだろう。

 

 

また過去、真田さんは海外の作品などでサムライ役などで出演していたが、作品に対する違和感があったとしても、それを監督やプロデュサーに指摘できなかったらしい。

未だに欧米では、アジア人俳優の地位は白人俳優よりかなり低く、それにより真田さんは仕事上とても困難を極めたこともあったと聞く。

欧米社会ではアジア人ゆえの差別があって、制作側に言える立場でなかっただろうし、たとえ言ったとしても、相手側がそれを聞き入れてくれることがないと分かっていたのだろう。

国内にいる私達には分からない差別感だ。

いや、吃音の私には少し分かる気もするが・・・・・

海外で住んでいる人がエッセイで、相手の眼付や言葉での差別意識は伝わるが、それよりも肌でビンビンと伝わる疎外感はどうしょうもないと書いていたことがある。

きっと海外旅行では分からないことだろうと思う。

海外で仕事をすることで初めてわかることだろう。

しかし、そのような苦労があったことなど、少しも見せない真田さんは流石である。

 

真田広之さんは2003年に公開された、トムクルーズ主演の「ラスト・サムライ」にも出ておられる。

日本側の主な出演者は渡辺謙さん、それに小雪さんだった。

この映画、マスコミ等では評判がよかったが、私には時代劇というより西部劇のように見えた。

 

明治維新後の戦いになぜか、トムクルーズが演ずる第7騎兵連隊の隊員いたりがするからだろう。

構想は面白かったが、やはり時代劇に無理やり騎兵隊を登場さすなど無茶な筋立てであった。

この映画のヒントとなる筋書き、構想は西南戦争であったり、戊辰戦争であったりするというから驚く。

ハリウッドの脚本家はそこまで勉強しているのかと思った。

何でも戊辰戦争では榎本武揚と一緒に戦った、フランス陸軍大尉がいたらしい。

脚本家はそこからヒントを得、構想を練ったのだろう。

でもいくら明治政府のお雇い外国人と言っても、北軍の騎兵隊員はあんまりだ。

日本の地形の複雑さと、近代戦術を学んだ反乱軍とされるサムライたちでは、先住民を相手にしてきた騎兵隊の戦術は役に立たないだろう。

後にトムクルーズはお雇い外国人の立場から、反乱分子とされるサムライたちと行動を共にし、明治政府軍と戦うことになる。

 

しかしなぜか、映画の中で描かれる反乱分子の住まいの家屋は茅葺、いや藁ぶきか草ぶきのような粗末なモノばかりだった。

いくら反乱分子の家屋だからといっても、それはないだろうと思った。

明治政府に歯向かうほどの財力と軍事力があるのなら、西郷さんや榎本武揚のように、九州各地の城や函館五稜郭のような城を拠点にしているはずだ。

それが不思議なことに反乱分子たちは小さな村を拠点にしている。

それでどうして政府軍と戦うことができるのだろうか?

 

私は映画を観ていて、アメリカ人は日本のサムライたちはアメリカ先住民と同じように考えているのか、またそう考えたいのだろうと思った。

ラストサムライの制作陣は日本には城などないことにしょうとしていたのかも知れない。

アメリカ人にすれば、自分たちの歴史に城など存在しないのに、未開で野蛮な日本に立派な城などあっていてはいけないということだろう。

アメリカ人はヨーロッパ文化に相当な劣等感を持っている。

そのヨーロッパと並ぶような立派な堀や櫓をもった城を、日本が持っていることなど、アメリカ側スタッフからすれば、アメリカ国内に知られたくないことだった。

それに北軍の騎兵隊員が日本の城から出撃している図は、アメリカ側にすれば絶対に見せたくないに違いない。

 

映画だけの知識だが、騎兵隊はアメリカ西部の丸太で作ったような粗末な砦に駐屯していたように思う。

それが堀も櫓もある日本の城から騎兵隊員が出てくれば、アメリカの視聴者はどう思うだろうか?

だから日本の城は映画の中で使わなかったと考えられる。

つまり、サムライを形を変えたインデアンとして描きたかったのだろう。

でも昔のように先住民を悪者にできないし、そのような映画を作ることなどできない

そこで悲劇の消えゆく先住民を、同じように時代から取り残され、消えゆくサムライたちに投影した。

ハリウッド映画らしい筋立てだ。

そこにサムライ文化に傾倒してゆくトムクルーズの騎兵隊員が加わる。

そしてサムライの長、勝元の妹、たかと恋におちる。

よくあるパターンだ。

 

このお馴染みの筋書きはSFにも、また戦争映画にも数多くある。

昔の西部劇にも、インデアンを悪者にした視点から、ガラリと変わって、主人公がインデアンの生活に傾倒してゆく様を描いた映画が何作か作られたことがる。

よく恥ずかしげもなくこのような映画を作れると思ったモノだが、これも彼等ヨーロッパから来た移住してきた人たちが、インデアンとされる先住民を殺しまくった懺悔なのか、それとも贖罪意識から出てきたモノかと思って見ていた。

しかしどれもが中途半端な映画だった。

そこに描かれた主人公たちの姿は、ベトナム戦争で心を病んだ兵士たちとダブって見えたのだが・・・・・

 

アメリカ国内では、騎兵隊は今でも正義の味方であるという。

ハリウッドの制作陣は「ラストサムライ」の構想をいろいろな理屈をつけて、こねくり回して、何時もどうりのワンパターン映画に仕上げていた。

自分たちアメリカは、世界のどこに行っても正義の味方なのだとう意識なのだろう。

それを旗印に同じような映画を作り続けていた。

でも、もう無理筋なのだ。

なのに、いつまで白人至上主義の映画をハリウッドは作るつもりなのだろうかと思ってしまう。

 

先にも書いたが、真田広之さんが主人公で、ドラマ「将軍」がDisneyプラスで製作されたが、以前にもジェーム・クラベルの小説を原作として、1980年、アメリカNBCで製作されたことがある。

日本でもテレビ朝日で1981年に放送されている。

もう40年前以上のことになるが、覚えている方も多いだろう。

その時の将軍役は三船敏郎さんで、細川ガラシャ役が島田陽子さんだった。

国際的に名前が知られている三船さんが将軍役をやるなら、誰もが主人公と思うだろうが、そうではなく、主人公は三浦按針役のリチャード・チェンバレンだった。

今回の将軍役は真田広之さんだ。

 

それなら主人公はまた三浦按針役の外国人になるだろうと思ったが、そうはならずに、主人公も真田広之さんになっている。

これはやはり確実に時代が変わってきたのと、真田さんの努力の成果だと思う。

以前の「将軍」は三浦按針役の外国人から見た日本観だったが、今回の「将軍」は日本人から見た、外国、西洋諸国観だという。

時代も変わったモノだ。

これからは外国が時代劇を作っても変なモノは減ってくるかも知れない。

それならば尚、日本製の本物の時代劇を真田さん主演で製作し、海外にこれが日本の時代劇だと発信してほしい。

日本が外国に売れる映画はゴジラとアニメ、それに時代劇しかないのだから。

 

〇真田広之さんとは、若い頃に保津峡の落合橋で出会ったことがあった。

出会ったといってもただすれ違っただけで、言葉も交わさなかったが、橋の上は他     に誰もおらず、遠くから来る真田広之さんがとても自然体で、気負った処がまったく

なかったので今もよく覚えている。