霊媒師
「あなたのおじいさまの霊を呼び起こしてほしいと。」


玲子
「はい。
 私、今度結婚するんですけど、
 祖父の豊三に直接、そのことを伝えたくて。」


霊媒師
「なるほど。
 では、降霊しましょう。」


玲子
「お願いします。」


霊媒師
「はっ!!
 んにゃんにゃんにゃんにゃ・・・
 タァーッ!!」


玲子
「・・・。」


霊媒師
(がっくりとうなだれる)


玲子
「・・・。」


霊媒師(豊三の霊、降霊中)
「・・・玲子。」


玲子
「おじいちゃん?!
 おじいちゃんなの?!」


霊媒師(降霊中)
「あぁ。」


玲子
「とりあえず、これ。
 おじいちゃんの大好物のゴディバのチョコレート。」


霊媒師(降霊中)
「ありがとうありがとう。
 チョコはやっぱり、ゴディバじゃ。(箱を開け、食べ始める)」


玲子
「おじいちゃん。」


霊媒師(降霊中)
「(チョコを食べながら)何じゃ?」


玲子
「あたしね、今度、結婚することになったの。」


霊媒師(降霊中)
「おぉ、そうか。
 それはよかった・・・」


玲子
「それだけ、伝えたくて。
 お盆でもないのに、呼び出してごめんなさい。」


霊媒師(降霊中)
「いいんじゃ、いいんじゃ。
 そうか。玲子が結婚か。
 こりゃ、いいことを聞いた。」


玲子
「それじゃあね、おじいちゃん。」


霊媒師(降霊中)
「あぁ・・・。」


玲子
「・・・。」


霊媒師

(うなだれたまま)


玲子
「よかった。
 おじいちゃんに結婚が報告できて。」


霊媒師

(うなだれたまま)


玲子
「おじいちゃん、あたしにいつも、
 結婚はまだかって聞いてたもんね。」


霊媒師
(うなだれたまま)


玲子
「それにしても、この霊媒師さん、起きないわね。
 ちょっと。霊媒師さん。(霊媒師の肩をゆする)」


霊媒師(降霊中)
「なんじゃ?」


玲子
「あ、おじいちゃん。
 まだ、この人の体にいたのね。
 伝えたいことは以上だから、もういいわよ。」


霊媒師(降霊中)
「そうかそうか。
 玲子も結婚か。こりゃ、いいことを聞いた。(うなだれる)」


玲子
「・・・まだこの人の体にのりうつったままだったのね。」


霊媒師

(うなだれたまま)


玲子
「そろそろいいかな?
 霊媒師さん?」


霊媒師(降霊中)
「なんじゃ?」


玲子
「おじいちゃん!
 もういいわよ。
 早く帰って。」


霊媒師(降霊中)
「冷たいな。
 結婚すると、女は冷たくなるのかな。」


玲子
「早く帰って!!」


霊媒師(降霊中)
「はいはい。帰ります帰ります。(うなだれる)」


玲子
「なかなか家に帰らないところは生きてるときと変わらないわね。」


霊媒師
(うなだれたまま)


玲子
「もう帰ったかな?
 ・・・おじいちゃん?」


霊媒師(降霊中)
「ん?」


玲子
「早く帰れ!!」


霊媒師(降霊中)
「イヤじゃ!」


玲子
「イヤじゃ、じゃないわよ!!
 ほら、霊媒師さんもいつまでも降霊したままだと困るでしょ?」


霊媒師(降霊中)
「イヤじゃ。ワシはこの体が気に入った!!」


玲子
「ちょっと出てってよ、おじいちゃん!!
 ・・・どうしよう。他の霊媒師の人に相談してみようかな。」



【10分後、他の霊媒師到着】



霊媒師2
「失礼します。
 この霊媒師さんですか。おじいさんの霊が出てこないというのは。」


玲子
「そうなんですよ。
 さっきから説得しているんですが・・・」


霊媒師1(降霊中)
「ワシはここから動かんぞ!!」


玲子
「一応、何かできないかなぁと思って、
 蚊取り線香を焚いてみたんですけど、
 効果はありませんでした。」


霊媒師2
「そうですね。効果はないと思います。
 ちょっと、右腕を持ってください。」


玲子
「(霊媒師の右腕を持つ)こうですか?」


霊媒師2
「私は左腕を持ちます。
 こうなったら、意地でも引きずり出しましょう。
 左右に引っ張って!!(左腕を引っ張る)」


玲子
「はいっ!!(右腕をひっぱる)」


霊媒師1(降霊中)
「痛い痛い痛い!!
 もげるもげるもげる!!」


玲子
「もげるって言ってますよ!?」


霊媒師2
「もげれば、そこからおじいさんも出てくるでしょう!」


玲子
「ちょっとストップ!!(引っ張るのをやめる)
 怖いこと言わないでください!!」


霊媒師2
「実力行使がダメなら、これはもう警察に連絡ですね。」



【10分後、警察到着】



レポーター
「こちら、立てこもりが発生している現場です。
 白昼の住宅街で老人の霊が霊媒師に立てこもるという事件が発生しました。」


玲子
「すごい・・・。警察だけじゃなくてマスコミもいっぱい来た・・・」


レポーター
「立てこもっているのは近田豊三容疑者。享年92歳です。
 先ほどから、警察が必死の説得を試みていますが、今のところ、応じる様子はないようです。」


警部
「おい!おとなしく、霊媒師の体から出てくるんだ!!」


霊媒師1(降霊中)
「うるさい!!早く、ワシの要求をのむんじゃ!」


レポーター
「近田容疑者は警察に対して、逃走手段を要求している模様です。
 現在、警察は近田容疑者に説得を試みる一方で、
 逃走用の霊媒師の手配を行っていると発表しました。」


巡査
「警部。犯人の奥さまが到着しました。」


玲子
「ごめんね、おばあちゃん。
 呼び出しちゃって。」


おばあさん
「いいよいいよ。
 気にするでない。」


警部
「それでは、これを。(拡声器を渡す)」


おばあさん
「(拡声器を使って)おじいさん!
 ワシじゃ!
 早く出てくるんじゃ!」


霊媒師1(降霊中)
「ばあさん!
 いくらばあさんの頼みでも、そのお願いはダメじゃ!」


おばあさん
「生前はこんなことするような人じゃなかったじゃろ?!」


霊媒師1(降霊中)
「まぁ、生前は霊媒師に乗り移れなかったからね。」


おばあさん
「そうね。
 (警部に)ダメじゃね。」


玲子
「あきらめるの早っ!!」


警部
「うーん・・・。家族の説得にも応じないか・・・」


巡査
「警部、手配していた逃走用の霊媒師が到着しました。」


逃走用の霊媒師
「よろしくおねがいします。」


警部
「よろしくお願いします。
 かなりスピードは出るんですか?」


逃走用の霊媒師
「小、中、高、大学と陸上部で、全国大会にも何度も出たことがあります。
 オリンピック選手としての誘いもあったんですが、
 断って、霊媒師になりました。」


警部
「異色の経歴ですね・・・。
 よし、犯人を説得してみよう。
 (拡声器で)おい!要求通り、逃走用の霊媒師を用意したぞ!」


霊媒師1(降霊中)
「よし!今からそっちに乗り移るからな!
 変なマネするんじゃないぞ!!」


玲子
「でも、逃走用の霊媒師に乗り移られたら、
 逃げられちゃうんじゃ・・・?」


警部
「大丈夫です。
 ヤツが逃走用の霊媒師に気をとられているうちに、
 特殊部隊が乗り込みます。」


玲子
「よろしくお願いします。」


霊媒師1(降霊中)
「よし!乗り移るぞ!!」


警部
「今だ!突入ー!!」



(特殊部隊、一斉に霊媒師1に飛びかかる。)



霊媒師1
「痛い痛い痛い!
 ちょっと!!
 何するんですか?!」


特殊部隊
「あ!霊が抜けてる!!
 警部!逃げられました!」


巡査(降霊中)
「(乗り移る)残念じゃったな!ワシはここじゃ!」


警部
「突入ー!」



(特殊部隊、一斉に巡査に飛びかかる。)



おばあさん(降霊中)
「(乗り移る)こっちじゃこっちじゃ!!」


警部
「突入ー!!」



(特殊部隊、おばあさんにとびかかる)



レポーター(降霊中)
「(乗り移る)どこを見ておる!ワシはこっちじゃ!(別の体に移動する)」


警部
「くそぉ!すばしっこいヤツめ!」


逃走用の霊媒師
「そして、私には一切乗り移らないという屈辱・・・」


玲子
「気にしないで。」


霊媒師2(降霊中)
「(乗り移る)へっへっへ!!ノロマなヤツめ!!(別の体に移動する)」


警部
「くそぉ、なんとか、アイツの注意を引き付けることはできないのか?!」


玲子
「おじいちゃんの注意を引き付ける方法・・・?
 そうか!」


霊媒師1(降霊中)
「(乗り移る)ヘイヘーイ!ここじゃいここじゃーい!!」


玲子
「おじいちゃん!ゴディバのチョコレート!!」


霊媒師1(降霊中)
「(動きが止まる)なんじゃと?!」


警部
「確保ー!!」



(特殊部隊、一斉に霊媒師1に飛びかかる)



霊媒師1(降霊中)
「うぅ・・・。もはやこれまでか・・・」





こうして、おじいちゃんは逮捕され、
霊媒師さんごと警察に連行されました。


その後の裁判で、おじいちゃんは有罪となり、
オカマの霊媒師の体に禁固3年の実刑判決が下されました。







【コント・セルフ・ライナーノーツ】

ネタのメモ書きにあった

「背後霊」というワードと「ストライキ」というワードから
霊が霊媒師から出てこないという設定を思いつきました。


あとは一週間かけて、いろいろ展開を考えながら組み合わせて作ったコントです。








↓twitterです。(もふもふって名前ですが、僕です。フォローお願いします。)
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