(鳥人間コンテスト、機体チェック受付)



受付
「はい。
 機体の高さ、幅、奥行きも規定通りですし、
 安全性も確認できたので、
 本戦への出場許可を出したいと思います。
 本番のビッグフライトを期待します。
 がんばってください。」


パイロット
「ありがとうございました。」


受付
「次の方、どうぞ。」


宇宙人
(家族連れでやってくる。)


受付
「はい。よろしくお願いします。
 えーと、お名前は?」


宇宙人
(受付に耳打ち)


受付
「ワルサー星人さんですね。
 パイロットの方は?」


宇宙人
(手をあげる)


受付
「あなたですか。
 はい。では、機体の方を見せていただけますか?」



(受付の目の前に、いかにも手作りで作成した円盤が運ばれてくる)



受付
「(円盤を見て)これは・・・珍しい形の機体ですね。
 翼もないし・・・
 新しいですね。
 これはどれくらいの期間で作成されたんですか?」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「2か月ですか。
 結構、短い期間で作成されましたね。」


宇宙人
(頭をかく)


受付
「プロペラがないようですが、
 これは滑空機部門でのエントリーですか?」


宇宙人
(首をひねる)


受付
「あれ?
 機体には大きく分けて2種類あるんですけど、ご存知ですか?」


宇宙人
(首をひねる)


受付
「えーと、滑空機とプロペラ機の2種類があるんですけど。」


宇宙人
(首をひねる)


受付
「じゃあ、聞き方を変えます。
 この機体はどういう原理で飛ぶんでしょうか?」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「ワルサー星のテクノロジーですか。
 ちょっとそれ困るんですよね。
 滑空機部門とプロペラ機部門しかないので。
 ワルサー星のテクノロジー部門ってないんですよ。」


宇宙人
(受付に機体の中を見せる)


受付
「あ、機体の中にペダルがあるじゃないですか。
 ってことはこれは一応プロペラ機ってことですかね?」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「ワルサーのテクノロジーね。
 はいはい、わかりました。
 プロペラ機部門でエントリーしておきますね。」


宇宙人
(頭を下げる。)


受付
「あれ?でも、これよく見ると、
 機体の中にペダルが4セットありますね。
 ってことはこの機体、4人乗りですか?」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「パイロットはあなた一人ですか。
 あれ?じゃあ、残りの3セットは?」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「ワルサーのおちゃめな部分?
 ・・・ちょっと意味がわかりませんけど、
 パイロットはあなた一人ということですね。」


宇宙人
(頭を下げる。)


受付
「(宇宙人の家族を見る)えーと、残りの方は応援ということでよろしいですか。」


宇宙人
(耳打ち)


受付
「あ、奥さんと双子の娘さん。
 わざわざ紹介ありがとうございます。
 旦那さんの応援をよろしくおねがいしますね。」


宇宙人の妻、娘2人
(頭を下げる。)


受付
「まぁ、斬新な機体ですけど、
 サイズは規定通りだし、安全性も問題ないでしょう。
 本戦のフライトを許可します。
 本番はがんばってくださいね。」


宇宙人一家
(頭を下げる。)



(鳥人間コンテスト本番)



アナウンス
「続いてのフライトは『ワルサー星・鳥人間の会』。
 パイロットはワルサー星人の旦那さんです。」


実況
「さぁ、続いてプラットホーム上に現れた機体ですが、
 円盤型という非常に珍しい形をしています。」


解説
「そうですね。私も長年、いろんな機体を見てきましたが、
 この形状は見たことがありません。」


実況
「これ、どうやって飛ぶのでしょうか?」


解説
「一応、人力プロペラ機部門にエントリーしているので、
 プロペラが動力だと思うのですが、ちょっと予想がつかないですね。」


実況
「手元の資料によりますと、
 旦那さんは鳥人間に出場すると決定した日から、
 大好きなビールをやめ、ワインをたしなむようになったそうです。」


解説
「それ、ただ嗜好が変わっただけですね。」



(応援席の様子が映る)



宇宙人の娘2人
「(太鼓をたたく)ドン!ドン!ドン!」


宇宙人の妻娘2人
「ワレワレハ!」


宇宙人の娘2人
「(太鼓をたたく)ドン!ドン!ドン!」


宇宙人の妻娘2人
「ワレワレハ!」


実況
「非常に独特な応援をしているのはパイロットのご家族の方です。」


解説
「双子の娘さんなんですね。カワイイですね。」


実況
「なんでも、パイロットの奥さんは
 旦那さんが鳥人間コンテストに出場が決まって以来、
 5年間続けていた禁酒宣言を解き、
 ワインをたしなむようになったそうです。」


解説
「鳥人間コンテストとワインの関係性がイマイチわからないですけど。」


実況
「娘さん2人は
 お父さんが鳥人間コンテストに出場することが決まって以来、
 大好きな母乳をやめ、
 粉ミルクをたしなむようになったそうです。」


解説
「粉ミルクをたしなむって何ですか?
 家族みんなでたしなんでるんですね。」


プラットホーム担当
「ゲートオープン!」


実況
「さぁ、プラットホームの準備が整いました。
 いよいよフライトです!」


解説
「どんなフライトになるのか楽しみですよ。」


実況
「さぁ、飛び立ちました!
 お!垂直方向に飛行を始めましたね!」


解説
「ぐんぐん高度を上げてますよ。
 これはどう動くんでしょう?」


実況
「あ、応援席の方向に動き出しました。」


解説
「不規則な動きをしてますね。
 これは正常な動きなのか、トラブルなのか、ちょっとわかりません。」


実況
「応援席の上空で動きが止まりました。」


解説
「不気味ですね。なんなんでしょう。」


実況
「あ、機体の下から光が放出されています。」


解説
「まったく想像がつきませんね。」


実況
「おっと、すでにフライトを終えた他のチームのパイロットが3名、光にとりこまれていきます!」


解説
「3人とも機体に吸い込まれましたね。」


実況
「そして、大記録を目指して、動き始めました!」


解説
「あー。資料によると機体の中にペダルは4セットあったと聞いたので、
 さっき取り込んだ、別チームのパイロット3人にもペダルを漕いでもらってるのでしょう。」


実況
「ルール的にそれはアリなんですか?」


解説
「まぁ、ルールには書いてないですね。
 『フライト中に他のチームの人を取り込まない』とは。」


実況
「ルールの穴をついてフライトを続けているワルサー星人の旦那さん!」


解説
「相変わらず、不規則に動いてますね。
 これが後々響かなければいいのですが・・・」


実況
「しかし、距離は出てますよ!
 手元のGPSによるとすでに10km地点を通過しています!」


解説
「すごいスピードですね。
 距離だけじゃなく、スピードとしても記録を残すかもしれないですね。」


実況
「おっと高度が下がってきました!
 移動速度もフライト直後と比べて遅くなってきました!」


解説
「4人乗ってるので、機体も重くなってますし、
 そのうち3人は他のチームのパイロットですからね。
 しかも、自分たちのフライトを終えた後ですから、
 ほとんど戦力になっていないでしょう。」


実況
「実質、4人乗っている機体をワルサー星人の旦那さん一人が動かしていると!」


解説
「でしょうね。」


実況
「作戦ミス!
 明らかに作戦をミスした『ワルサー星・鳥人間の会』!」


解説
「あぁ、もうフラフラですね。」


実況
「しかし、もうすぐ20km地点!
 ぜひ、記録に残るフライトをしてほしい!」


解説
「あぁ、高度が下がってきましたね・・・!」


実況
「ここで着水!
 最後まで不規則な動きを崩しませんでした!」



(着水地点)


(ワルサー星人と他のチームのパイロット3人が息を切らせている)



他のチームのパイロット1
「なんで俺たちを乗せたんだよ!」


他のチームのパイロット2
「俺たち、なんで2回も飛ばなきゃいけないんだよ!」


他のチームのパイロット3
「もうフラフラだっていうのに!」


宇宙人
(パイロット1に耳打ち)


他のチームのパイロット1
「『いいチームワークだったよね』じゃねーよ!!」


他のチームのパイロット2
「めちゃくちゃジグザグに飛んでたじゃねぇかよ!」


他のチームのパイロット3
「酔っちゃったよ!
 鳥人間の機体で乗り物酔いって普通しないぞ!」


宇宙人

(パイロット1に耳打ち)


他のチームのパイロット1
「『いい記録出るといいね』じゃねーよ!!」


他のチームのパイロット2
「そりゃ、あんたは自分の記録だからいいけどさ!」


他のチームのパイロット3
「俺たちの記録抜かれたら、納得いかねぇよ!」


アナウンス
「只今の『ワルサー星・鳥人間の会』、ワルサー星人の旦那さんの記録は・・・」


実況
「・・・。」


解説
「・・・。」


宇宙人
「・・・。」


アナウンス
「ルール違反のため、失格となります。」


実況
「ですよね。」


解説
「ルール違反の時点でパイロットに伝えるべきでしたよね。
 何も20キロ近くも漕がせて、着水してから失格を伝える必要ないですよね。」


宇宙人パイロットたち
「・・・。」


宇宙人
(耳打ち)


他のチームのパイロット1
「『みんなで文句言いに行こうよ』じゃねーよ!!」


他のチームのパイロット2
「俺たちにしてみたら、むしろ納得の結果だよ!」


他のチームのパイロット3
「言っとくけど、俺たちは仲間じゃねぇからな!!」







しかし、翌年、彼らは夢の4人乗り機体で
再びビッグフライトを目指すことになる!!
(フライト後に取り込まれる誘われ方は変わらないが。)







【コント・セルフ・ライナーノーツ】

UFOで何かコントを作れないか考えた結果、

鳥人間コンテストとくっつけるアイディアが浮かんでそこから広げたコントです。


意図したわけじゃないのですが、過去最大数の登場人物の数となりました。





このコントを気に入っていただけた方、

↓こちら↓のコントもいかがでしょうか。

未知との遭遇






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