(財布が落ちている)



玲奈
「(通りかかる)あ、財布。」



(玲奈、財布を拾う)



玲奈
「どうしよう・・・
 交番に届ける?
 いや、持って行っちゃおうかな・・・
 あぁ!!どうしたらいいの!?」



ポン!(天使が現れる)



天使
「ネコババはいけません。交番に届けましょう。」


玲奈
「そうよね。持って行っちゃいけないわよね。」



ポン!(悪魔が現れる)



悪魔
「何をしている!誰も見ていないんだ!
 ネコババしちまえばいいんだよ!!」


玲奈
「確かに。今月、厳しいのよね・・・」


天使
「ダメです!警察に届けましょう!」


悪魔
「いいや!ネコババだ!!」


玲奈
「あぁ!もう!!どうしたらいいのっ!?
 (天使の方を振り返る)・・・ってアレ?」


悪魔
「どうした?」


玲奈
「(天使に向かって)・・・もしかして、お父さん?」


天使
「・・・玲奈?
 ・・・ひょっとして、玲奈なのか?!」


玲奈
「お父さん!!
 なにしてるの、こんなところで?!
 10年前に突然家族を置いていなくなって!!」


天使
「いや、それについては申し訳ないと思ってる・・・。」


玲奈
「あたしとお母さんがどれだけ心配したことか!!」


天使
「うん・・・。ホント、申し訳ない・・・。」


悪魔
「え?あの?どういうこと?」


玲奈
「あ、父です。」


天使
「娘がお世話になってます。(一礼)」


悪魔
「いや、お世話もなにも・・・」


玲奈
「お父さん!仕事は?!
 物流の会社で部長として働いてるんじゃなかったの?!」


天使
「実は、10年前に大規模なリストラがあってな・・・
 管理職も例外じゃないと言われて、クビになった・・・」


玲奈
「クビ?!」


天使
「あれから毎日、ハローワークに通って、
 この仕事を見つけた。
 10年がんばって、部長にまで昇進した。」


玲奈
「昇進ってなに?部長ってなに?」


天使
「営業部の部長だ。
 (悪魔を指さし)彼は営業部第1課の課長。」


悪魔
「お世話になっております。(一礼)」


玲奈
「天使と悪魔って、営業だったのね。
 あと、天使が悪魔の上司だったら、
 立場を使って言うこと聞かせればいいんじゃないの?」


天使
「それはダメだ。
 会議室でしっかり議論して、結論を出して、
 議論の内容は議事録に残さないと。」


悪魔
「では、お嬢さん、会議室に行きましょう。」


玲奈
「行かないわよ。
 なんで、財布拾っただけで、
 会議室で議論しなきゃいけないのよ。」


天使
「というか、玲奈!
 父親として言う。
 財布は交番に届けるべきだ!!」


玲奈
「こんなときだけ父親面しないでよ!
 突然いなくなったと思ったら、
 天使の格好で現れて!
 本当に心配したんだから・・・!!(泣く)」


天使
「玲奈・・・(泣く)」


悪魔
「オレ、こういうの、ダメなんだよなぁ・・・(泣く)」


通りすがりの子供
(玲奈、天使、悪魔の様子を遠くからじーっと見ている。)


子供の母
「勇人、何してるの?」


通りすがりの子供
「(3人を指さし)・・・ママー!」


子供の母
「(3人を見て)しっ!!見ちゃいけません!!(子供を連れていく)」


玲奈
「っていうか、お父さん!
 いい大人が天使の格好して外を歩き回らないでよ!
 恥ずかしいじゃない!!」


天使
「恥ずかしいとは何だ!
 ウチの会社のユニフォームだぞ。」


玲奈
「ただのコスプレじゃないの!」


通行人
「(やってくる)すみませーん!写真撮らせてもらっていいですか?」


天使
「あ、いいですよ。」


玲奈
「即答?!
 少しは恥ずかしがりなさいよ!!」


天使
「これも天使の仕事の一つだ。
 ほら、玲奈。真ん中に立って。」


玲奈
「あたしも?!」


天使
「そうだよ。
 お前が悩んで、父さんたちが出てきたんだから。」


通行人
「(スマホを構えて)はい、撮りま~す。」



(玲奈、財布を持って困った表情。
 左サイドに笑顔の天使。
 右サイドに悪そうな顔をした悪魔。)



電子音
「♪ピロリ~ン!」


通行人
「ありがとうございます!
 いつもこの辺りにいらっしゃるんですか?」


天使
「そうですね。
 9時から18時の間に財布を拾っていただければ現れます。」


悪魔
「12時から13時は昼休憩なので、
 財布は拾わないようにしてください。
 あと、土日祝日はお休みです。」


通行人
「わかりました。ありがとうございます!!
 (歩いていく)Twitterに載せよ。」


玲奈
「ちょっと待って!Twitterには載せないで!
 仲間と思われる!!」


天使
「仲間だろ?」


玲奈
「仲間じゃないわよ!
 何?この家族の再会!!
 財布拾ったら、10年前に蒸発した父親が天使のコスプレで現れるって!」


天使
「コスプレじゃない!
 ユニフォームだ!」


玲奈
「っていうか仕事って言ったわよね?
 天使と悪魔ってどうやって生計立ててるの?」


悪魔
「もし、財布をネコババした場合は、
 ネコババした金額から一割が悪魔に入ります。」


玲奈
「何ちゃっかり、ネコババしたお金の一部をもらってるのよ!
 交番に届けたときは?」


天使
「落とし主から謝礼として、
 落とした金額の三割をもらうことになってる。」


玲奈
「悪魔よりも多くもらってるじゃない!!」


天使

「部長だからな。」


玲奈

「何、役職手当ついてるのよ!」


着信音
「♪天使のような~悪魔の笑顔~」


悪魔
「(スマホを取り出す)もしもし、営業の悪魔です。
 え?3丁目に財布を拾った男性がいる?!
 わかりました。すぐに向かいます。
 (電話を切る)部長!」


天使
「わかった。すぐに向かおう。
 玲奈。そんなわけで、まだ当分、家には帰れそうにないから。
 母さんによろしく伝えておいてくれ!」


玲奈
「ちょっと待って!
 家に帰ってきてよ!お父さん!!
 あと、そんな格好で街中をウロウロしないで!!」


天使
「この仕事はまだまだメジャーじゃない。
 この業界が日本中に認知されたら、お前たちの家に帰る。
 それまでは母さんにこの仕事をやっていることは黙っていてほしいんだ。」


玲奈
「それは大丈夫。説明できないから。」


天使
「それじゃあな、玲奈。
 風邪をひきやすい季節だから、体調管理には気をつかうんだぞ!(走っていく)」


玲奈
「お父さん!!
 行っちゃった・・・。
 ・・・とりあえず、お母さんには今日、お父さんに遭ったことは黙っておこう。」



(その日の夜)



玲奈
「お母さん、ただいまー。」


玲奈の母
「玲奈。今日、Twitterで玲奈とお父さんが写った写真が
 すごい勢いで拡散されているのを見たんだけど。」


玲奈
「早速、バレたーーー!!」













【コント・セルフ・ライナーノーツ】
未だにこのブログの検索ワードとして使われる「天使と悪魔」の第4弾です。
年末年始の休みの間に思いついた設定です。

2016年も当ブログをよろしくお願いします。








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