主任
「(扉を開けて部屋に入る)さぁ、入って。」


バイト
「(部屋に入ってくる)失礼します。」


主任
「えー、主任の南沢です。」


バイト
「柏木です。」


主任
「えーと、柏木くんにお願いしたいのは、わが社の製品の検品作業です。」


バイト
「検品作業。」


主任
「そう。(箱から小さな棒を取り出す)これが製品。」


バイト
「棒?なんですか、これ。」


主任
「ピノキオの鼻。」


バイト
「ピノキオの鼻?」


主任
「そう。ウソをつくと伸びる。
 ちょっとやってみるよ。
 (ピノキオの鼻に向かって)『私の正体はセミです。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「あ、伸びた。」


主任
「そう。こんな感じでウソをついたときに、ちゃんと鼻が伸びるかチェックして、
 チェックOKなら、こっちのOKの箱に入れてください。」


バイト
「はい。」


主任
「逆に・・・(NGの箱から鼻を取り出す)
 これはすでにNGになったヤツなんだけど・・・
 (ピノキオの鼻に向かって)『私は誕生日が年2回あります。』」



(ピノキオの鼻、伸びない。)



バイト
「伸びないですね。」


主任
「こんな感じで鼻が伸びなかったらNGの箱に入れてください。
 やることはわかった?」


バイト
「はい。わかりました。」


主任
「じゃあ、私は隣の部屋にいるから、なにかわからないことがあったら呼んで。
 (部屋を出ていく)」


バイト
「わかりました。
 (席に着く)じゃあ始めるか・・・
 (箱から鼻を1つ取り出す)えーと、ウソをつけばいいんだよな。
 『私の先祖は聖徳太子です。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「伸びた。(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 えーと・・・
 『地球は僕の力で自転しています。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕は7歳までオオカミに育てられました。』」



(ピノキオの鼻、伸びない。)



バイト
「(鼻をNGの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『ドラえもんのモデルは僕です。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕の小学校の校長先生は全員、身長が3mありました。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕は生まれて以来、赤信号に捕まったことがありません。』」



(ピノキオの鼻、曲がる。)



バイト
「おっと・・・これはどうすればいいんだ?
 (ドアを開け)南沢さん!南沢さん!!」


主任
「なに?なんかあった?」


バイト
「(曲がった鼻を見せる)ウソをついたら、こんな風になったんですけど」


主任
「あ、これはNGでいいよ。
 鼻として使えないから。」


バイト
「わかりました。」


主任
「じゃ、よろしく。(部屋を出ていく)」


バイト
「(鼻をNGの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕の父がドラゴンを倒したって話は、みんな知ってると思うんだけど・・・』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕の名前で画像検索すると、福士蒼汰の画像が大量にヒットします。』」



(ピノキオの鼻、伸びない。)



バイト
「(鼻をNGの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『大晦日の予定?紅白だけど。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『シャープペンシルは僕の発明です。』」



(ピノキオの鼻、部屋の端から端まで一気に伸びる。)



バイト
「うわっ!!
 伸びたなぁ・・・
 こういう場合はどうするんだろう。
 (ドアを開け)南沢さん!南沢さん!!」


主任
「ん?どうした?」


バイト
「(思いっきり伸びた鼻を指さし)
 あの・・・こんなに伸びちゃったんですけど。」


主任
「あぁ、たまにあるんだよ、必要以上に伸びちゃう鼻。
 これはピノキオの鼻としてじゃなくて、
 つっかえ棒として使うから
 『つっかえ棒』って箱に入れておいて。」


バイト
「わかりました。」


主任
「じゃあ、よろしく。」


バイト
「(鼻をつっかえ棒の箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『来週武道館でライブやります。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『さっき、そこで火星人に会いました。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『来年4月から"強すぎる"という理由でチョキが廃止されます。』」



(ピノキオの鼻、伸びない。)



バイト
「(鼻をNGの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『今年の冬、桃太郎がハリウッドでリメイクされます。』」



(ピノキオの鼻、伸びる。)



バイト
「(鼻をOKの箱に入れ、次の鼻を取り出す)
 『僕はケンタウロスの父と人魚の母の間に生まれたハーフなわけですが・・・』」



バンッ!!(ピノキオの鼻、爆発する。)



主任
「(部屋に入ってくる)何?!どうしたの?!」


バイト
「いや、ウソをついたらピノキオの鼻が爆発して・・・」


主任
「あぁ、これもたまにあるんだよ。」


バイト
「たまにあるんですね。」


主任
「NGの箱に入れておいて。」


バイト
「わかりました。
 あ、そろそろ僕、用事があるんで帰りたいのですが・・・」


主任
「あ、そう?
 じゃあ、今日の給料だしておくね。」


バイト
「ありがとうございます。」


主任
「今日の給料、10万円。」


バイト
「10万円?!」



(部屋じゅうのピノキオの鼻が伸びる)



バイト
「って、ウソかよ!!」









【コント・セルフ・ライナーノーツ】

設定を思いついたとき、思わずニヤけてしまったコント。

あとは、一発でわかるバレバレのウソをたくさん考える作業でした。