少女
「マッチいりませんか?
 すみません、マッチいりませんか?
 ・・・全然売れない・・・。
 寒い・・・。
 このままだと凍えてしまうわ。
 そうだ。このマッチに火をつけて、温まりましょう。」



(少女、マッチに火をつける。)



少女
「あぁ・・・あったかい・・・。
 家族みんなであったかいご飯を食べたいな・・・」



(少女の前に、夕食を囲む家族のイメージが映る)



少女
「いいなぁ。
 わたしも家族みんなでご飯が食べたい・・・」



(楽しそうに夕食を食べる家族のイメージ。)



少女
「家族っていいなぁ。
 こんな感じで夕食を囲めたら、どんなに幸せだろう・・・」



(ふと、イメージの中の子供が少女の視線に気づき、少女の方を見る)



少女
「この子がうらやましいなぁ・・・
 お父さんとお母さんと一緒に幸せに過ごしているんだろうなぁ。」



(子供、少女の方をじーっと見ている。)



少女
「・・・?」


子供
「(少女を指さし)パパー。」


父親
「ん?どうした?(子供が指さす方向を見て、少女と目があう)
 ・・・・?」


少女
「・・・?」


父親
「・・・。」


少女
「・・・。」


父親
「(立ち上がり)何だ、あんたは?!
 人の家庭をのぞいて、何をしているんだ?!」


少女
「えっ?!(とっさにマッチの火を消す)」



(家族のイメージが消える)



少女
「え・・・?
 どういうこと?
 ・・・向こうからも私が見えていたの?
 ・・・気のせいよね。
 マッチの火で温まりましょう。(マッチに火をつける)」



(再び、さっきの家族のイメージが映る)



父親
「(椅子に座る)・・・まったく、さっきの女はなんだったんだ。」


子供
「(少女の視線に気づき)パパー。また出たー。」


父親
「(立ち上がる)またあんたか?!

 なんだ、人の家庭をのぞき込んで!」


少女
「ヤバい!(マッチの火を消す)」



(家族のイメージが消える)



少女
「・・・やっぱり、私が見えているの?
 あれ、イメージじゃないの?
 どこかとつながってるの?
 ・・・そんなわけないわよね、もう一度・・・(マッチに火をつける)」



(さきほどの家庭のリビングが映るが、席には誰も座っていない)



少女
「おいしそうだなぁ、ご飯。
 一度でいいから、こんな夕食をお腹いっぱい食べたいなぁ。」



(突然、イメージ映像が真っ暗になる)



少女
「真っ暗になった!
 なに、どうしたの?!」


子供(声)
「パパ!!つかまえたよ!!」


父親(声)
「よし、ケンジ、逃がすな!!
 今、とどめをさすから!!
 母さん!何か叩くものを!!」


少女
「マズい!(マッチの火を消す)」



(イメージが消える)



少女
「また、さっきの家族につながっちゃったの?
 ・・・しかも、今度は待ち伏せしていたし。
 そして、殺そうとしてた・・・
 (マッチを取り出し)次こそは、あの家族につながるんじゃなくて、
 イメージ映像を映し出してね。お願いよ。(マッチに火をつける)」



(さきほどの家庭のリビング。
 床から食卓を見上げる目線のイメージが映し出される)



子供
「(少女の視線に気づき、少女に指を指しながら)パパ!いた!!」


父親
「出たな!これでもくらえ!!(少女に向かってスプレーを噴射)」


少女
「危ない!!(マッチの火を消す)」



(イメージが消える)



少女
「殺虫剤まかれた・・・
 しかも、なんかゴキブリ目線だったし・・・
 (マッチを取り出す)なんでこのマッチはいつも、あの家族につながるの?
 マッチを変えてみればいいのかな。
 (別のマッチをとりだす)こっちのマッチにしてみよう。
 (マッチに火をつける)」



(さきほどの家庭のリビング。
 やや高い角度からリビングを見下ろすイメージが映し出される
 リビングには家族の他にお坊さんもいる)



子供
「(少女を指さし)あ、また出たよ!!」


父親
「(お坊さんに)あれです!!」


お坊さん
「出たな、悪霊め!!
 悪霊退散っ!悪霊退散っっ!!(少女に塩をまく)」


少女
(マッチの火を消す)



(イメージが消える)



少女
「(塩まみれになって)・・・とうとう、悪霊扱いされちゃった!」


紳士
「(やってくる)キミ。」


少女
「え、あ、はい。」


紳士
「マッチをくれないか。」


少女
「いや、あの・・・、このマッチでいいんですか?」


紳士
「あぁ。ライターを切らしてしまってね。
 (お金を払い、マッチを受け取る)
 よかった。これでタバコが吸える。(立ち去る)」


少女
「行っちゃった・・・
 あのマッチ、売って大丈夫だったのかな」


子供(声)
「(遠くから声が聞こえる)パパー!!おじさんの顔が出たー!!」


父親(声)
「(遠くから声が聞こえる)なんだ、あんたは!!
 あの少女の保護者か?!
 住職、お願いします!!」


お坊さん(声)
「(遠くから声が聞こえる)悪霊退散っ!!悪霊退散っっ!!」


少女
「火をつけたのね・・・」


紳士
「(塩まみれでやってくる)・・・キミ。」


少女
「はい・・・。」


紳士
「・・・このマッチ、何?」


少女
「そういうマッチです・・・。」









【コント・セルフ・ライナーノーツ】
読み物コントなのに、会話中心ではなく映像中心のコント。


マッチ売りの少女が見ているイメージの途中で、子供だけカメラ目線になる、
というアイディアを思いついて、そこから広げました。


ちなみに、家族からは集合写真の日にお休みだった人みたいなイメージで少女の姿が見えている

という設定です。


これはぜひ、誰かが演じている姿が見たいです。



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