昼。
ビルの屋上。




スナイパー
(ライフルを組み立てている。)


教官
「(やってくる)おはよう。」


スナイパー
「あ。おはようございます。」


教官
「えーと。路上教習は今日が初めて?」


スナイパー
「はい。今日から第2段階です。」


教官
「わかりました。
 路上では、一般のスナイパーさんもたくさんいるので、
 これまで以上に安全狙撃を心がけてください。」


スナイパー
「はい。」


教官
「えー、路上教習を担当します。南條です。よろしく。」


スナイパー
「よろしくおねがいします。」


教官
「今、準備中かな。」


スナイパー
「はい。今、ライフルを組み立て終わりました。」


教官
「はい。それじゃ、早速、路上教習を始めましょう。」


スナイパー
「よろしくおねがいします。」


教官
「じゃあ、まずは向かいに27階建のビルがあるでしょ?」


スナイパー
「はい。」


教官
「あのビルの26階に窓を背にした男の人がいるね。
 あの人、いってみようか。」


スナイパー
「わかりました。(ライフルを構える。)」


教官
「よく狙ってね。」


スナイパー
「・・・いきます。」


教官
「はい。」


銃声
「パーン!!」


スナイパー
「やった!!」


教官
「ん?当たった?」


スナイパー
「当たりましたよ。倒れました。」


教官
「いや、倒れてないよ。
 どの人のことを言ってる?」


スナイパー
「ん?26階の男の人ですよね。茶色のスーツ。」


教官
「違う違う。26階はあってるけど、黒のスーツだよ。
 茶色のスーツの人は窓を背にしてないから。」


スナイパー
「あー!間違えました!」


教官
「頼むよ。学科教習で習ったスナイパー心得・第2条覚えてる?」


スナイパー
「えーと、『ライフルを家に忘れない』」


教官
「違う。それは第1条。
 第2条は『ターゲットを間違えない』でしょ。
 ターゲットを間違えると依頼人の信用を失うことになるから、気をつけて。」


スナイパー
「はい。」



(ビルの下で救急車のサイレンの音が聞こえる)



教官
「じゃあ、同じビルの25階に窓を背にした男の人がいるね。」


スナイパー
「紺のスーツで電話してる人ですか?」


教官
「そう。その人いってみようか。」


スナイパー
「はい。(ライフルを構える)」


教官
「ターゲットは動いてないから今がチャンスだよ・・・」


スナイパー
「はい・・・」



(スナイパーの元にバレーボールが転がってくる)



女子社員
「すみませーん!ボールとってくださーい!」


スナイパー
「あ、はい。(ボールを拾い、女子社員に投げ返す)」


女子社員
「ありがとうございまーす!
 あれ?もしかしてスナイパーの方ですか?!」


スナイパー
「あ、はい。
 でも、今、仮免ですけど・・・」


女子社員
「すごーい!
 あ、もしよければ、写真いいですか?!(スマホを取り出す)」


スナイパー
「あ、いいですよ・・・」


教官
「(割って入る)ごめんなさい。今、教習中なんで、写真はちょっと・・・」


女子社員
「そうなんですね。すみません。お邪魔しちゃって。
 握手!握手だけ!!」


スナイパー
「あ、はい・・・(握手)」


女子社員
「わー!スナイパーと握手してもらっちゃった!
 それじゃ失礼します!
 狙撃、がんばってください!!(走っていく)」


教官
「(走っていく女子社員を見届けて)・・・駄目だよ、写真は。
 スナイパー心得・第14条、覚えてる?」


スナイパー
「『酒の席にライフルを持っていかない』」


教官
「違う。」


スナイパー
「『電車に乗るときは網棚にライフルを置かない』」


教官
「それも違う。
 『写真をお願いされても断る』でしょ?
 ネットにアップされたら、依頼人の信用を落としちゃうから。」


スナイパー
「あー、そうでした。」


教官
「そうそう。依頼人と言えば、口座は持ってる?」


スナイパー
「持ってます。」


教官
「スイス銀行?」


スナイパー
「いや、ゆうちょですけど・・・」


教官
「ダメダメ。スイス銀行に口座作って。
 報酬をゆうちょに振り込んでもらっちゃダメ。
 スナイパー心得・第25条でやったでしょ?」


スナイパー
「第25条・・・
 『自転車のかごにライフルを入れるときは防犯ネットをかける』?」


教官
「それは第37条。」


スナイパー
「『ターゲットの葬儀にはできるだけ顔を出す』」


教官
「それは第116条。」


スナイパー
「『あいさつはしっかりしよう』」


教官
「それは町内会の今年のテーマ。」


スナイパー
「なんでしたっけ?」


教官
「『依頼人から報酬をスイス銀行に振り込んでもらうことを忘れない』でしょ?
 ゆうちょだと足がつくから。」


スナイパー
「心得が多すぎて・・・」


教官
「あ、もうこんな時間か。
 次回の路上教習はあさってだっけ?」


スナイパー
「はい。14時からです。」


教官
「わかった。
 あと、今年から夜間教習が2時限必須になったから、忘れずに予定をいれておいてください。」


スナイパー
「はい。」


教官
「早く、仮免じゃなくて、本物の『殺しのライセンス』がとれるといいね。」


スナイパー
「はい!」


教官

「それじゃ、あさっての14時からお待ちしています。」


スナイパー
「ありがとうござい・・・」



「そこまでだ!!」



(屋上に大量の警官が突入してくる)



スナイパー
「(手をあげる)え?何?!何?!」


警官
「さっき、向こうのビルのオーナーを撃ったのはキミたちだね。」


スナイパー
「・・・えーと、はい。
 (教官に)こういう場合はどうすればいいんですか?」


教官
「・・・スナイパー心得・第200条。」


スナイパー
「えーと、
 『ライフルに慣れない間は大人の人に付き添ってもらう』。」


教官
「違う。」


スナイパー
「『お菓子を床に落としても、5秒以内に拾えばセーフ』。」


教官
「それも違う。」


スナイパー
「『キリンさんが好きです。でも、ゾウさんの方がもっと好きです。』」


教官
「かすりもしない。」


スナイパー
「なんでしたっけ?」


教官
「『捕まるときは、いさぎよく』でしょ?(両手を差し出す)」


スナイパー
「そうでした。(両手を差し出す)」









【コント・セルフ・ライナーノーツ】
しばらく昔話コントが続いていたので、久しぶりの現代ものコントです。
何かの教習という設定を考えていたのですが、今回はスナイパーの教習です。


ちなみに教官の名前は『デューク南條』という裏設定があります。



スナイパー心得はなんかいろいろ作れそう・・・




今回のコント、もし演じるとしたら、各登場人物は誰が適任でしょう?
「この人!」という方がいらっしゃれば、ぜひ、コメントに残してください。

今回の主要登場人物
スナイパー
教官
女子社員



また、「こんなスナイパー心得どうですか?」案があれば、
そちらもコメントに書いていただけるとうれしいです。




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