乙姫
「こちら、おみやげの玉手箱です。
 ぜひ、お持ち帰りください。」


浦島太郎
「いやぁ、こんなにもてなしを受けておみやげまで・・・
 ありがとうございます。」


乙姫
「いいですか。
 くれぐれもこの玉手箱は開けないでくださいね。」


浦島太郎
「開けない・・・
 わかりました。」


カメ
「それじゃ、浦島さん、いきましょうか。」


浦島太郎
「それではさようなら!!」


乙姫
「お元気で!」



(10分後)



着信音
「ピロロロロロロロ・・・ピロロロロロロロ・・・」


乙姫
「もしもし。」


カメ
「あ、乙姫さま。
 浦島さんを砂浜まで送り届けました。」


乙姫
「御苦労さま。」


カメ
「それじゃ、これから竜宮城に戻りますので・・・」


乙姫
「あ、カメさん。カメさん。」


カメ
「はい。何でしょう?」


乙姫
「この後、浦島さんはさっき渡した玉手箱を開けると思うの。」


カメ
「え?
 でも、さっき『絶対開けるな』って・・・」


乙姫
「いい?
 人間っていうのはね、開けるな開けるなって言われると
 開けてしまうものなの。」


カメ
「そういうものですか・・・」


乙姫
「だから、浦島さんが玉手箱を開ける瞬間を見届けてほしいの。」


カメ
「はぁ・・・。

 わかりました。」


乙姫
「今、浦島さんは何してる?」


カメ
「今、玉手箱を持って公衆トイレに入りました。」


乙姫
「バレないように尾行して。」


カメ
「はい。」


乙姫
「くぅ~・・・
 浦島さん、いつ玉手箱開けるんでしょうね・・・
 ワクワクするわ!」


カメ
「乙姫さま!
 浦島さん、トイレから出てきました。」


乙姫
「バレないように追いかけてね!」


カメ
「あれ?」


乙姫
「どうしたの?」


カメ
「玉手箱を持ってません!」


乙姫
「ちょっと何やってるのよ!
 カメさん、トイレの中に忘れてないか探して!」


カメ
「はい!」


乙姫
「玉手箱を開けなかったら、物語が終わらないじゃない!」


カメ
「あ!」


乙姫
「あった?」


カメ
「洗面所のところに置いてあります!」


乙姫
「急いで浦島さんのところに届けて!」


カメ
「よいしょ!よいしょ!
 浦島さーん!」


浦島太郎
「ん?何?」


カメ
「ちょっとこれ、玉手箱!
 忘れてますよ!」


浦島太郎
「あぁ、すみません。
 ついうっかり・・・」


カメ
「頼みますよ。
 いいですか?
 この玉手箱、絶対に開けないでくださいね!」


浦島太郎
「はい。開けません!」


カメ
「それじゃ、お気をつけて!」


浦島太郎
「はいー!」


カメ
「乙姫さま。
 玉手箱、届けました!」


乙姫
「御苦労さま。
 浦島さん、玉手箱開けそう?」


カメ
「いや、まだ脇に抱えてとぼとぼ歩いてます。」


乙姫
「早く開けなさいよ~・・・
 このシーン、『浦島太郎』の物語上、ぜんぜんいらない部分なんだから・・・」


カメ
「それにしても、このあたり、バイクの交通量がすごいですね。」


乙姫
「そうなの?」


カメ
「あ!!」


乙姫
「何?!」


カメ
「浦島さん、バイクの男に玉手箱をひったくられました!」


乙姫
「何してるのよ、もう!
 そういうのいらないって!!
 カメさん、なんとかならない?!」


カメ
「追いかけます!!」


乙姫
「追いつくの?!」


カメ
「追いつきました!」


乙姫
「追いついたのね!!」


カメ
「こらぁ!!その玉手箱返せぇ!!」


乙姫
「なんてアグレッシブなの!!
 カメにしておくにはもったいないくらいだわ!!」


カメ
「乙姫さま、玉手箱、取り返しました!」


乙姫
「すぐに浦島さんに返してあげて!」


カメ
「浦島さーーん!!」


浦島太郎
「あぁ、カメさん。」


カメ
「玉手箱!
 取り返してあげましたよ!」


浦島太郎
「ありがとうございます。」


カメ
「いいですか。
 絶対に開けないでくださいね!!」


浦島太郎
「はい!開けません!!」


カメ
「それでは!」


浦島太郎
「はいー。」


カメ
「乙姫さま。
 玉手箱、返してきました。」


乙姫
「玉手箱、開ける雰囲気あった?」


カメ
「いや、まったく。」


乙姫
「なんで開けないのよ、もう!
 今、何待ちだと思ってるのよ!
 ちょっと、電話、浦島さんに出てもらって。」


カメ
「はい。
 浦島さーーん!
 乙姫さんから電話です。」


浦島太郎
「もしもしお電話変わりました。浦島です。」


乙姫
「浦島さん?
 その玉手箱、絶対に開けないでくださいね!」


浦島太郎
「はい。開けません。」


乙姫
「うん。開けないでください。」


浦島太郎
「はい。開けません。」


乙姫
「・・・。」


浦島太郎
「・・・。」


乙姫
「・・・。」


浦島太郎
「・・・。」


乙姫
「・・・開けてよ!!」


浦島太郎
「はい?」


乙姫
「開けなさいよ!
 『開けるな開けるな』って言ってるんだから、開けなさいよ!」


浦島太郎
「ん?ん?ん?」


乙姫
「いい?
 『押すなよ!押すなよ!』は『押せ!』の合図なの!
 養成所で習ったでしょ?」


浦島太郎
「『押すなよ!押すなよ!』は『押せ!』の合図・・・」


乙姫
「そう。
 ということは、『開けるな!開けるな!』は?」


浦島太郎
「・・・『押せ』。」


乙姫
「違う!!
 『開けるな!開けるな!』って言ってる人を押してたら、
 やがてケンカになるわよ!」


浦島太郎
「えーと・・・えーと・・・」


乙姫
「今、パニックになってるみたいだけど、簡単なの。
 電話を切ったら、玉手箱を開けて。わかった?」


浦島太郎
「その『開けろ』というのは、『開けるな』の合図ですか?」


乙姫
「違う。」


浦島太郎
「『押せ』の合図ですか?」


乙姫
「違う!
 『押せ』を例に出したのは謝るから。」


浦島太郎
「なんとなくわかった気がします。」


乙姫
「そう?待ってるからね!
 じゃ、カメさんに電話返して。」


カメ
「もしもし、乙姫さま。
 カメです。」


乙姫
「どう?
 浦島さん、玉手箱、開けそう?」


カメ
「最初の砂浜の方に、とぼとぼ歩いてますね。」


乙姫
「砂浜で開けるのかしら。」


カメ
「あ!」


乙姫
「今度は何?!」


カメ
「子供たちがカメをいじめてます!」


乙姫
「最初にあなたをいじめてた子供たちじゃない?
 他に娯楽はないのかしら。」


カメ
「浦島さん、子供たちに『カメをいじめるな』と説得してるみたいですね。」


乙姫
「正義感は人一倍あるのね・・・」


カメ
「でも、子供たちも譲りませんね。」


乙姫
「なんてガンコな子たちなの・・・」


カメ
「子供たち、浦島さんの持ってる玉手箱がほしいって言ってますね。」


乙姫
「ダメよ。それ、これから浦島さんが開けるんだから。」


カメ
「浦島さん、子供たちに玉手箱を渡しましたね。」


乙姫
「何であげちゃうのよ!
 さっきの『わかった気がする』発言は何だったの?!」


カメ
「子供たち、山の方に走っていきますね。」


乙姫
「カメさん!急いで追いかけて!!」


カメ
「すみません・・・
 もう足が限界です・・・」


乙姫
「とりあえず、力を振り絞って追いかけて!!」


カメ
「ダメです!完全に見失いました・・・!!」


乙姫
「うーん・・・
 それじゃ、もうひとつ玉手箱を用意するわ。
 ひとまず竜宮城に戻ってきて。」


カメ
「わかりました。
 今、最初の砂浜に戻ってきたところです。
 ・・・あ!!」


乙姫
「どうしたの?!」


カメ
「フタが開いた玉手箱が落ちてる・・・!!」


乙姫
「ちょっと待って!玉手箱、誰かが開けちゃったの?!」


カメ
「玉手箱の傍らで、おじいさんたちがカメをいじめてます・・・」


乙姫
「・・・それ、さっきの子供たちが玉手箱開けちゃったんじゃない?!」


カメ
「ちょっと、君たち!この玉手箱開けたー?!」











【コント・セルフ・ライナーノーツ】

前回の桃太郎に続き、浦島太郎のスポットを当てない部分に当ててみました。

主に電話だけで続く会話劇なので、ほぼト書きなしです。



今回のコント、もし演じるとしたら、各登場人物は誰が適任でしょう?

「この人!」という方がいらっしゃれば、ぜひ、コメントに残してください。


今回の登場人物

乙姫

浦島太郎

カメ



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