バッター
「９回裏ツーアウトランナー２塁３塁。
得点は２対３。
しかし、ここで俺が一発撃てば逆転も可能だ。
ここは必ず打つ！！」
ピッチャー
「そうはいかない。
ここは、俺が開発した魔球でお前を仕留めてやる！」
バッター
「魔球？！」
ピッチャー
「いくぞ！！（構える）」
バッター
「っ！！（構える）」
ピッチャー
「いけぇっ！！（投げる）」
バッター
「ボールが消えた！？」
ピッチャー
「そう！『消える魔球』だ！！」
バッター
「そんな・・・
消える魔球が投げられるなんて・・・
（審判に）で、今のはストライク？ボール？」
審判
「いや・・・
ボールが途中で消えちゃったから
ストライクでもボールでもない・・・」
ピッチャー
「どうだ！！」
バッター
「いや、『どうだ』じゃない。
え？消えたらもう出てこないの？」
ピッチャー
「出てこないけど・・・」
バッター
「ちょっと、審判！」
審判
「消える魔球はすごいんだけど、
ゲーム進行の妨害になるから、ボール消さないでくれる？」
ピッチャー
「すみません・・・」
バッター
「気を取り直して・・・」
ピッチャー
「いけぇ！！（投げる）」
カーン！！
バッター
「よし！！クリーンヒットだ！！（走る）」
ピッチャー
「これはヤバイ！！
こうなったら・・・！！」
バッター
「よし！これで同点だ！！
あれ？１塁ベースがない・・・」
ピッチャー
「そう！『消える１塁ベース』だ！！」
バッター
「何消してんだよ！
ちょっと審判！！」
審判
「（ボールボーイに）おーい！新しいベース持ってきて！！
（ピッチャーに）ゲームの進行を妨害しないでくれる？」
ピッチャー
「すみません。」
バッター
「気を取り直して・・・」
ピッチャー
「いけぇっ！！（投げる）」
ズバン！！
審判
「ストライク！！」
監督
「（走ってやってくる）ちょっと今のはボールでしょ？！」
バッター
「そうですよ！監督、言ってやってください！！」
審判
「ストライク！」
監督
「ボール！」
審判
「ストライク！！」
監督
「ボール！！」
審判
「ストライク！ストライク！ストライク！！」
監督
「・・・。」
バッター
「ちょっと監督、もっと言ってくださいよ！
（振り向く）あれ？監督がいない。」
ピッチャー
「そう！『消える監督』！！」
バッター
「人を消しやがった！！
え？消える魔球の原理って神隠しなの？！
ちょっと審判！！」
審判
「さっきからいろいろ消してるけど、
次、何か消したら退場だからね！」
ピッチャー
「はい・・・」
バッター
「気を取り直して・・・」
ピッチャー
「いけぇっ！！（投げる）」
ズバン！！
バッター
「・・・。」
キャッチャー
「・・・。」
バッター
「・・・ん？ストライク？ボール？
審判？
・・・あれ、審判は？」
ピッチャー
「『消える審判』！」
バッター
「だから消すなって！！
何、自分にとって都合の悪い人間を
次々消してんだよ！！」
キャッチャー
「どうだ！コイツの能力、脅威だろ！！」
バッター
「いや、確かに脅威だけど、
それはピッチャーとしてより、超能力者として脅威だよ！！
ちょっと新しい審判来て！！再開するよ！！
・・・あれ？キャッチャーは？」
ピッチャー
「『消えるキャッチャー』！」
バッター
「何で消したんだよ！！
とうとう無差別に消しにかかってきたぞ！！
ちょっとチームメンバーみんな出てきて！
コイツ、おかしいよ！！
あれ？メンバーが誰もいない。」
ピッチャー
「『消えるチームメンバー』！」
バッター
「根こそぎ消しやがった！！
こんなことして、ウチのファンが黙っちゃいないぞ！！」
ピッチャー
「『消える観客』！」
バッター
「ファンたちになんてことすんだよ！！」
（スタジアム、真っ暗に）
バッター
「あれ？停電？！」
ピッチャー
「『消える照明』！」
バッター
「それ、ただの消灯だよ！！」
ピッチャー
「『消える俺たち』・・・」
バッター
「ちょっと！！
俺だけ残してみんな消えるなよ！！
この一連の行為の目的がわからないよ！！
・・・誰か返事してよ！！
・・・みんな野球しよーよ！！
・・・俺、明日からどうやって生計立てていけばいいんだよ！
・・・今日、帰って家族になんて説明すればいいんだよ！！」
（暗闇の中、バッターの声だけがむなしく響く・・・）
【コント・セルフ・ライナーノーツ】
５月くらいに思いついたコント。
書いてみたら、意外と長尺になってしまいました。
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