女性アナウンサー
「それでは、ロンドンオリンピックの情報です。
 男子・正直者で日本代表の田吾作選手が快挙を成し遂げました。
 それでは、VTRをご覧ください。」



(VTR)



実況
「昨日の夜から降り続いていた雨は今朝から小雨に変わりました。
 ロンドン郊外の泉です。
 こちらで本日、男子・正直者の競技が行われます。」


解説
「暑くもなく絶好のコンディションだと思います。
 ぜひ、金を取ってほしいですね。」


実況
「さぁ、現れました。日本の田吾作です。
 今日も右手に斧を持っています。
 『亡くなった母親に金を捧げたい』と、競技前のインタビューで語っていました田吾作です。」


解説
「小さい頃に母親を失くしているんですよね。
 そんな母親からの教えが『正直に生きなさい』とのことでした。
 その母親の教えを守ってほしいですね。」


実況
「さぁ、田吾作、準備が整いました。

 いよいよスタートです。」


ブザー

「ブーーーーーー!」


実況

「さぁ、スタートしました。
 まずは木を切り始めます。」


解説
「いいですよー。フォームも乱れていません。」


実況
「さぁ、ここで、斧を泉に投げた!」


田吾作
「うぉーーーーーーっっ!!」


実況
「田吾作、叫びます!」


解説
「斧の飛距離も出てますよ。」


実況
「さぁ、ここで泉から女神が出てきます。」


解説
「ここからが正念場です。」


女神
「あなたが落としたのはこの金の斧ですか?」


実況
「さぁ、田吾作、何と答える?」


田吾作
「いや、オラが落としたのは金の斧ではありません。」


実況
「田吾作、正直に答えた!!」


解説
「まだわかりませんよ。油断してはいけません。」


女神
「では、あなたが落としたのはこの銀の斧ですか?」


実況
「田吾作の答えは?」


田吾作
「いえ、オラが落としたのは普通の斧です。」


実況
「ここも正直に答えた!!」


解説
「いいですよ。よどみなく答えてます。女神に対しても好印象です。」


女神
「あなたは大変正直者ですね。
 ほうびとして、この金の斧を差し上げます。(金の斧を渡す)」


実況
「やりました!!日本の田吾作、金を手にしました!!」


解説
「いやぁ、やりましたね!!」


実況
「1984年のロサンゼルスオリンピックで正式種目になって以来、
 初めての金、獲得です!!」


解説
「いやぁ、ここまで長かった・・・。」


実況
「今まで、金の斧が出た瞬間、『それです。』と即答していた日本勢。
 童話を読み返し、『正直に答えなきゃダメなんだ。』と、先日知りました。
 その後、正直に答えられるように猛特訓!
 それが今日の金につながりました!!」


解説
「ちょっと待ってください。
 まだ女神が何か言ってますよ。」


女神
「正直なあなたには、この銀の斧も差し上げます。(銀の斧を渡す)」


実況
「なんと!日本の田吾作、銀も手にしました!!」


解説
「これは快挙ですね。1つの競技で金と銀を独占ですよ!」


実況
「田吾作、金と銀を掲げ、観客の声援に応えます!!」


解説
「いやぁ、田吾作選手、よくやりましたね。」



(スタジオ)



女性アナウンサー
「はい。ご覧いただきました通り、男子・正直者で日本の田吾作選手が金、銀を独占するという快挙を成し遂げました。
 そして、今、田吾作選手と電話がつながっています!!
 もしもし!」


電話
「・・・。」


女性アナウンサー
「もしもし?」


電話
「・・・。」


女性アナウンサー
「・・・ちょっと、音声の方が届いていないようです。」



(ディレクターが女性アナウンサーの元にやってきて、耳打ち。)



女性アナウンサー
「えー、男子・正直者で金と銀を独占した田吾作選手ですが、
 『母親の体調が悪くなった』とのことで、電話に出られないそうです。残念ですね。
 ・・・さて、田吾作選手ですが、勝ち取った金の斧、銀の斧を手に『これで天国の母にいい報告ができる。』と満面の笑みでした。」



(女性アナウンサー、ちょっと考え込む。)



女性アナウンサー
「天国の母・・・?体調不良で電話に出られない・・・?」



(女性アナウンサー、気づく。)



女性アナウンサー
「(小声で)・・・っていうか、ウソつきじゃん!」








【コント・セルフ・ライナーノーツ】

会社の人が号外を持って、「金だ!」「銀だ!」と盛り上がっているのを見て、

ふと、この設定が思いつきました。

今を逃すと、待たなくちゃいけないから、急いで作りました。





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