(雨の降る公園。
 傘をさした少年の前にフタの開いたダンボール。
 ダンボールの中には80歳くらいの老人がおり、少年を見つめている。)

 

ケンジ
「(老人に向かって)ごめんよ、神様。
 僕の家では神様を飼っちゃいけないんだって。」

 

神様(ダンボールに入っている)
「・・・。」

 

 

ケンジ
「いままでみんなに隠して飼ってたけど、
 お母さんが無神論者なんだ。
 だから、見つかった後ですごく怒られて、
 『すぐに捨ててらっしゃい』って・・・」

 

 

神様

 

「・・・。」

 

ケンジ
「だいたい、お前もいけないんだぞ。
 お前、僕が学校に行ってる間に勝手にお風呂使っただろ?
 だから、お風呂掃除しようとしたお母さんとはち合わせて
 『あなた誰ですか?!』ってなったんだ。」

 

 

神様
(うつむく。)

 

 

ケンジ
「それにお前、『あなた誰ですか?!』って聞かれた後、『神だ・・・』って言っただろ。
 あれが事態を更にややこしくしたんだからな。
 不審者度合いが増しただけだから。
 僕が事情を説明して、警察沙汰にはならなかったけど・・・。」

 

 

神様

 

(うつむく。)

 

ケンジ
「とにかくごめん!
 新しい飼い主、優しい人だといいな!
 それじゃあな!(走り去る)」

 

 

神様
(杖を取り出し、天にかざす。
 杖の先端が光りだす。)

 

 

ケンジ
(神様と反対方向に走っているが、体はどんどん神様の元に戻っていく。
 最終的に神様の目の前に戻ってしまう。)

 

 

神様
(楽しそうな目でケンジを見る)

 

 

ケンジ
「神様、こういうときに能力を使うんじゃないよ。」

 

 

神様
(うつむく)

 

 

ケンジ
「(神様の前にしゃがみこむ。)
 だいたいお前、何の神様なんだ?
 ずっと不思議だったんだけど・・・」

 

 

神様
(ケンジを見る)

 

 

ケンジ
「お前を隠して飼っている間、特に勉強ができるようになったわけじゃないから、
 学問の神様じゃないよな。」

 

 

神様
「・・・。」

 

 

ケンジ
「彼女もいないし・・・。
 だから、恋愛の神様でもなさそうだし・・・。」

 

 

神様
「・・・。」

 

 

ケンジ
「・・・雑種か?」

 

 

神様
「!!」

 

 

ケンジ
「お前、雑種なのか?
 なぁ。どうなんだよ?
 雑種なのか?」

 

 

神様

 

(杖を取り出し、天にかざす)

 


ズドーーーーーン!!
(ケンジの真横に雷が落ちる)

 

 


ケンジ
「!!」

 

 

神様
(杖をしまう。)

 

 

ケンジ
「・・・気にしてたんならごめん。
 ただ、雑種って言われたくらいで天罰下すなよ・・・。」

 

 

神様
(うつむく)

 

 

ケンジ
「そうだ。神様、お腹空いてないか?
 さっきおこづかいでおにぎり2つ買ったんだ。」

 

 

神様
(目が輝く)

 

 

ケンジ
「どっちがいい?シャケとシーチキン。」

 

 

神様
(2つのおにぎりを交互に見る)

 

 

ケンジ
「お前も迷うか。じゃあ、いつものヤツで決めよう。」

 

 

神様
(うなづく)

 

 

ケンジ
「ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な。
 か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り!」

 

 

神様
「(低い声で)シーチキン。」

 

 

ケンジ
「はい、どうぞ。
 いつも思うんだけど、最終的に神様が口頭で決めるんなら、
 僕の『ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な』のくだりはいらないと思うんだよね。」

 

 

神様
(夢中でおにぎりを食べる)

 

 

ケンジ
「おいしいか?」

 

 

神様

 

(うなづく。)

 

ケンジ
「よかった。」

 

 

神様
(おにぎりを食べ終わる)

 

 

ケンジ
「(立ち上がる)『捨てる神あれば、拾う神あり』って言うけど、
 まさか神様を捨てることになるとは・・・。」

 

 

男性
「(やってくる)キミ、その神様、どうしたんだい?」

 

 

ケンジ
「え?コイツが勝手に家のシャワーを浴びていたところをお母さんに見つかって、
 『捨ててらっしゃい』って言われて・・・。」

 

 

男性
「そうか・・・。
 じゃあ、この神様は捨て神様なんだ・・・。
 キミ。この神様、私のところで飼ってもいいかな。」

 

 

神様
「!!」

 

 

ケンジ
「え?コイツ、飼ってくれるの?」

 

 

男性
「あぁ。私のマンションはペット可だし、多分、神様も例外にはならないと思う。」

 

 

ケンジ
「よかったな!新しい飼い主が見つかったよ!」

 

 

神様
(頭上の輪っかを振る。)

 

 

男性
「この神様は何を食べるんだい?」

 

 

ケンジ
「何でも食べるよ。お母さんに内緒で飼っているときは、僕の晩ごはんを少し分けてあげたんだ。」

 

 

神様
「(低い声で)今半の弁当が食べたい。」

 

 

男性
「何か言ってるけど。」

 

 

ケンジ
「無視していいよ。神様の鳴き声なんだ。」

 

 

男性
「すごい鳴き声だね。てっきり、要望されているのかと思った。」

 

 

ケンジ
「たまにおじさんのところに神様の様子見に行っていい?」

 

 

男性
「あぁ、いいよ。いつでも来なさい。」

 

 

ケンジ
「ありがとう!よかったな、神様。この人のところで元気にやるんだぞ。」

 

 

神様
「(男性に向かって低い声で)ねぇ、今半の弁当が食べたい。」

 

 

男性
「また、鳴いてる。名残惜しいんだね。」

 

 

ケンジ
「それじゃ!(走り去る)」

 

 

 


(帰り道)

 

 

 

 


ケンジ
「いやぁ、新しい飼い主がすぐに見つかってよかったなぁ・・・」

 

 

 


(ダンボールに入った若い女性を見つける)

 

 


女性
(ケンジを見つめている)

 

 

ケンジ
「・・・。」

 

 

 

 

(ケンジの家)

 

 

ケンジ
「(先ほど見つけた女性を連れている)
 ただいま、お母さん。
 ねぇ、女神さま拾ったんだけど、うちで飼っていい?」

 

 

 

ケンジの母
「オスがメスに変わっただけじゃないの!!」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】
神様をぞんざいに扱ってみたら・・・ってことで、このシチュエーションを考えてみました。
最後に女神さまを見つけてくる部分はすぐに思いついたのですが、
神様もハッピーエンドにする展開をいろいろ考えて、この流れになりました。
最後のお母さんのツッコミがお気に入り。

 

 


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