(世界ライトフライ級タイトルマッチ
 チャンピオン 小久保健斗VS挑戦者 マイケルハウエルズ 記者会見)

 

小久保
「そんなわけで、僕のボクシングは完全データ主義です。
 相手の情報を徹底的に分析して、研究し、対策を練る。
 これが勝つための秘訣です。
 そういった意味では、今回の対戦相手であるマイケルハウエルズ選手は
 情報が少ない分、かなりの強敵と言っていいでしょう。」

 

 

司会
「はい。というわけで、今回の挑戦者はインテリボクサーと言われる小久保選手にとって、
 かなりの強敵であるということです。
 これはかなり見応えのある試合になるかもしれませんね。
 さて、たった今、挑戦者であるマイケルハウエルズ選手が会見場に到着したようです。
 それでは、マイケル選手、お入りください。」

 

 


(カメラマン、一斉に扉の方向にカメラを向ける。
 扉が開くがそこには通訳しかいない。
 誰もいない扉に向かってシャッターを切るカメラマンたち)

 

 

 

司会
「はい。マイケル選手お座りください。」

 

 

 


(小久保の隣に一つ間を開けて通訳が座る。)

 

 


小久保
「(周囲の人に)・・・え?マイケルはどこ?まだ来てないの?」

 


司会
「さて、みなさまご存じの通り、マイケルハウエルズ選手は
 『裸の王様症候群』にかかっております。
 『裸の王様症候群』、簡単にいいますと、マイケル選手の姿はバカには見えないというものです。」

 

小久保
「え?バカには見えない?(目をこすって、辺りを見回すがマイケルの姿は見えない)」

 

 

司会
「大変失礼ですが、この会場の中にマイケル選手の姿が見えないという方、いらっしゃいますでしょうか?」

 

 

小久保
(手を上げようとする)

 

 


(会場、誰も手を上げない)

 

 


小久保
(あわてて、手を引っ込める)

 

 

司会
「いらっしゃいませんね。小久保選手もマイケル選手の姿は見えていらっしゃいますよね?」

 

 

小久保
「え?・・・え、ええ、もちろん!当然です!!(マイケルがいると思われる方向をジロジロ見る)」

 

 

司会
「さて、こちらのマイケル選手。デビューから負け知らずの12連勝。
 異例のスピードで今回のタイトルマッチの挑戦者に選ばれました。
 それもすべて、『裸の王様症候群』のおかげです。
 というのも、対戦相手全員がマイケル選手の姿が見えなかったため、
 マイケル選手の圧勝だったのです。」

 

 

マイケル
「(英語・声のみ聞こえる)」

 

 

小久保
(驚いた顔で声のする方向をまじまじと見つめる。)

 

 

通訳
「正直、卑怯者と言われてきましたが、今回、ようやく私の姿が見える対戦相手と出会えて光栄です。
 当日は精一杯がんばりたいと思います。
 ミスター小久保、がんばりましょう。」

 

 

小久保
(マイケルがいると思われる方向を凝視している。)

 

 

司会
「小久保選手?」

 

 

小久保
(手を伸ばして、マイケルを触ろうとする。)

 

 

司会
「小久保選手?!」

 

 

小久保
「(手をひっこめる)え!?あ、はい!僕もそう思います。同感です。異議なしです。」

 

 

司会
「さて、小久保選手。実際に対戦相手を生で見て、どのように感じていらっしゃいますか?」

 

 

小久保
「生で見て・・・、まぁ見えてないんですけど・・・。
 ずいぶんとアレですね。身長に特徴が・・・ありそうな、なさそうなという感じを出しつつの、
 強面な感じがしないでもない感じが否めないと・・・。
 ・・・アレですね。強そうですね。」

 

 

司会
「なるほど。さて、ここで2人の写真撮影をしたいと思います。」

 

 

 

(机、椅子がかたずけられる。)

 

 

 


カメラマン
「すみません。お二人、ニラみ合っていただけますか?」

 

 

小久保
「ニラみ合う?(マイケルがいると思われる方向をニラむ)こうですか?」

 

 

司会
「すみません。お二人同時に私をニラまれても・・・」

 

 

カメラマン
「小久保さん、反対でーす。」

 

 

小久保
「なんで、逆側に立ってんだよ!(逆を向いて)こうですか?」

 

 

カメラマン
「ちょっとズレてまーす。」

 

 

小久保
「(顔の向きを少し変えて)こうですか?」

 

 

カメラマン
「もう少し右でーす。」

 

 

小久保
「(少し右を向く)こうですか?」

 

 

カメラマン
「もうちょっとだけ右でーす。」

 

 

小久保
「(少し右を向く)こうですか?」

 

 

カメラマン
「行き過ぎでーす。」

 

 

小久保
「マイケルがあわせてくれよ!」

 

 

司会
「あの・・・、小久保選手、マイケル選手の姿見えてます?」

 

 

小久保
「見えてますよぉ!はっきり、見えてますよぉ(必死)!」

 

 

カメラマン
「はい、撮りまーす。」

 

 

司会
「さて、ここで、今回のレフェリーを紹介したいと思います。
 今回の試合のため、特殊体質を持ったレフェリーにお越しいただきました。
 ジョージ堀内!」

 

 


(扉が開く。50代のおじさんが立っている。)

 

 


小久保
「・・・??
 どこが特殊体質の持ち主なの?」

 

 

司会
「はい。皆様、おわかりの通り、こちらのジョージ堀内氏。
 彼は『逆・裸の王様症候群』にかかっておりまして、
 彼の姿はバカにしか見えません。」

 

 

小久保
「しっかりと見える・・・(うなだれる)!!」

 

 

司会
「失礼ですが、会場の中でジョージ堀内氏の姿が見えるという方、いらっしゃいますか?」

 

 


(会場、誰も手を上げない)

 

 


堀内

 

「じゃあ、私は何のために来たんだ!?(地団駄!)」

 

司会
「はい。というわけで、来週行われるタイトルマッチはバカな方には選手1人とレフェリーの姿が、
 バカではない方には選手2人がリング上に見えるという不思議な試合をお送りします。
 どうぞ、お楽しみに!」

 

 


(翌日のスポーツ新聞一面。
 小久保とマイケルが2人で同じ方向をニラんでいる写真が載っている。)

 





 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

「裸の王様症候群」というアイディアは随分前から頭の中にあったのですが、

いい設定がなかなか思いつきませんでした。

医者から宣告される、漫才師の片方が感染している、など考えたのですが、

記者会見のスタイルを思いつき、最終的にこの形になりました。

 

 


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