マモル
(ベッドに座り、ボーッと外を眺めている)

(ドアをノックする音)

マモル
「どうぞ・・・」

橋本
「(部屋に入ってくる)やぁ。君がマモル君だね。」

マモル
「ああっ!橋本選手だ!アタフタズの4番打者の橋本選手だ!」

橋本
「はじめまして(マモルと握手)」

マモル
「はじめまして!・・・でも、どうして橋本選手がここに?」

橋本
「キミのお母さんに頼まれたのさ。何でもキミ、とても重い病気なんだって?」

マモル
「・・・うん。」

橋本
「でも、手術を受ければ治るらしいじゃないか。
 どうして手術を受けないんだ?」

マモル
「だって・・・怖いんだもん。」

橋本
「そんなこと言ってちゃダメだぞ。
 そうだ、マモル君。俺と約束しないか?」

マモル
「約束?」

橋本
「そう、約束。
 今夜の試合で俺がホームランを打ったら、キミは手術を受ける。
 どうだい?」

マモル
「ホームランを打ったら・・・手術?」

橋本
「そう。約束してくれるかい?」

マモル
「・・・わかった!
 その代わり、絶対ホームラン打ってね!約束だよ!!」

橋本
「よし!今日の試合、よく見ておくんだよ!!」

マモル
「うん!!」

------
翌日
------
マモルの病室

マモル
(ベッドに座り、ボーッと外を眺めている)

橋本
(マモルの隣に置いてある椅子に座っている)

マモル
「・・・。」

橋本
「・・・昨日の試合、見てくれたかな。」

マモル
「・・・見たよ。」

橋本

「・・・見たか。」

マモル
「・・・ホームラン、打てなかったね。」

橋本
「あ、いや、でも、第3打席は惜しかったんだよ。見ただろ、キミも?」

マモル
「見たけど・・・。ファールだったし。」

橋本
「いや、あれは入ってたって!審判よそ見してたって!俺の見た角度からは入ってたんだよ。」

マモル
「でも、判定はファールだったよ。」

橋本
「俺、散々抗議したんだよ。一生懸命アピールしたんだ。」

マモル
「うん。醜いくらいの抗議だった。
 でも、ファールだった。」

橋本
「まぁ、そうだけど・・・。
 どうだろ、あれをホームラン扱いにするってことで、キミも手術を・・・」

マモル
「受けない。」

橋本
「受けない、か。」

マモル
「ウソつき!」

橋本
「ちょっと待って!
 今日の試合!今日の試合でホームラン打つから!
 だから、今日の試合、しっかりと見ておくんだ!」

マモル
「絶対だよ?」

橋本
「男の約束!(親指を立てる)」

マモル
「・・・うん!」

------
翌日
------
マモルの病室

マモル
(ベッドに座り、橋本をニラんでいる)

橋本
(マモルの隣に立っている)

マモル
「5打数0安打。」

橋本
「いや、0安打ではあったけれども・・・」

マモル
「ホームランどころか、ヒットすら打てなかったじゃん!」

橋本
「でも聞いて!チームは試合に勝ったんだよ!
 そして、その勝利に貢献したのが俺!!」

マモル
「どこで貢献?」

橋本

「最終回、同点、ツーアウト満塁の場面で打席に上がった俺!
 結果的にはフォアボール。押し出しの1点で勝ち越し!
 ナイスフォアボールとは思わないか?」

マモル
「思わない。」

橋本
「チームメイトはみんな言っていた。
 『最後のあのボール、オレなら振っていた』と。
 ストライクゾーン、ギリギリ外れたあのボール。よくぞ見ていた、ナイス俺!」

マモル
「・・・。」

橋本
「どうだろう?ホームランは打てなかったけれども、
 あの押し出しフォアボールをホームラン扱いってことで、キミも手術を・・・」

マモル
「無理。」

橋本
「無理、か。」

マモル
「フォアボールをホームラン扱いって、よく言えたもんだね!」

橋本
「あのフォアボールはホームラン扱いだよ。
 『ホームラン扱い』っていうか、むしろホームランって呼んでほしい。」

マモル
「だいたい『ホームラン扱い』って何だよ!
 一昨日は『ホームラン打ったら手術』だったのに、

 昨日は『ギリギリファールだったから手術』 で、
 今日は『フォアボールで勝ったから手術』って・・・
 どんどんハードル下がってるじゃないか!」

橋本
「今日こそ打つ!」

マモル
「信頼できない。」

橋本
「男の約束!(親指を立てる)」

マモル
「昨日も言ってたし。」

橋本
「橋本の約束!(親指を立てる)」

マモル
「だからこそ信頼できないんだけど・・・。
 ・・・絶対打ってよ。」

橋本
「必ず!!」

------
翌日
------
マモルの病室

マモル
(ベッドに座り、橋本を見下している)

橋本
(マモルの病室で正座)

マモル
「・・・。」

橋本
「あれは、向こうが悪かったんだって。9-1の割合で。」

マモル
「・・・。」

橋本
「8-2・・・いや、7-3の割合で。
 俺も悪いけど、向こうも悪い。6-4の割合で。」

マモル
「乱闘で退場って・・・」

橋本
「だってさ、4打席連続デッドボールだよ?そりゃ、キレるでしょ。」

マモル
「デッドボールって縁起でもない・・・。
 第4打席、画面に「死球」「死球」「死球」て3つ並んでるんだよ?
 何かの暗示?メッセージ?!」

橋本
「俺のせいじゃないって!向こうが悪い!5-5の割合で!」

マモル
「第4打席、目が野獣の目になってたもん。
 子供を励ます目じゃないよ。
 僕のこと忘れてたでしょ。」

橋本
「忘れてた。」

マモル
「『忘れてた』って、言っちゃった!」

橋本
「でもさ、4つ目のデッドボールくらって、ピッチャーに思いっきり走って
 ラリアート喰らわせたでしょ?あれ、クリーンヒットだったよ!
 手ごたえ感じたもん!!」

マモル
「いいよ、手ごたえの話は!」

橋本
「仮に、俺の腕がバットで、あいつの顔がボールだったら完全にホームランだよ!
 あ!どうだろ、あれをホームラン扱いにするってことで・・・」

マモル
「バカか。」

橋本
「バカ、か。」

マモル
「何で乱闘を見せられて『よし、手術受けよう』ってなるんだよ。」

橋本
「次の試合こそ・・・」

マモル
「出場停止処分でしょ?」

橋本
「そっか。
 でも、復帰したら・・・」

マモル
「もういいよ!」

橋本
「え?!手術受けてくれるの?!」

マモル

「そういう意味じゃないよ!
 どこまで前向きなんだよ!
 橋本選手にはもうガッカリだよ!!」

橋本
「今度こそ打つから!」

マモル

「ちょっとお母さーん!!」

橋本
「(マモルの口をふさぎ)おい、お母さんは呼ぶんじゃない!
 約束しただろ!」

マモル
「してないよ!
 何で『お母さんは呼ばない』って約束するんだよ!」

橋本
「お母さん呼んだらホームラン打たないぞ!」

マモル
「脅迫かよ!
 ホームラン打たなかったら手術受けないよ!」

橋本
「ああっ、それは困る!
 お母さん呼んだら、執刀医の先生も呼ぶぞ!」

マモル
「あんた、何なんだよ!
 お母さん!お母さーん!!」

橋本
「執刀医の先生!執刀医の先生!!」

マモルの母
「マモル、どうしたの?!」

マモル
「橋本選手が脅すの!」

橋本
「バカ、お母さんを呼ぶな!
 キミも昨日のピッチャーのように病院送りにするぞ!」

マモル
「もう入院してるし!」

マモルの母
「ちょっと退場処分の橋本選手!息子に近づかないでください!」

橋本
「退場処分って言うな!
 こう見えても俺はナーバスなんだ!」

マモルの母
「知らないですよ!もうマモルには会いに来ないでください!」

橋本
「(執刀医に羽交い絞めにされる)くっそぉ!
 俺は君のために絶対ホームランを打ってやるからな!
 見てろよ!見てろよぉぉぉぉ!!(退場)」

マモル
「お母さん、僕、トラウマになりそうだよ。」

マモルの母
「ごめんなさいね、最初から別の人を連れて来ればよかったわね。
 というわけで、別の人を連れてきたわ。」

マモル
「別の人?」

石井
「どうも、プロゴルファーの石井です。
 今日、僕がホールインワンを打ったら、手術を受けてくれるかな?」

マモル
「(ニッコリ笑って)うん。ヤダ。」





 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

コントの設定としては王道のスタイル。

実況と解説の2人が橋本選手の乱闘を淡々と説明する、というスタイルも考えたのですが、

こっちに落ち着きました。

 

 


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