ペダルがまた、重くなった。ギアを下げる。僕は、サドルから腰を浮かせると、踏みつける様にペダルを漕いだ。心臓が、バクバクと音を立て身体中に、血液を送り出す。12月の風は、氷の様に冷たい。
「何よ、これ。」
亜里沙が、僕に詰め寄った。彼女の手には、薄緑色の洋封筒。
「手紙・・・。」
僕は、そう呟いた。すると亜里沙は、その綺麗に整った顔を歪めて、喚き散らした。
「何で、こんな物を沙雪に渡すの?迷惑でしよ。あんた、みたいなキモオ
タから、手紙なんて。」
沙雪。大人しくて人形の様に、可愛らしい沙雪。彼女が、言ったんだ。
「ラブレター。恋文。ロマンチックよね。貰ってみたい。」
だから、書いた。沙雪の為に。大好きな沙雪の為に。それなのに、何故
亜里沙が?亜里沙が、持っている?沙雪の為に、書いた手紙。綺麗な顔を鬼の様に歪めて睨み付ける亜里沙から、手紙をふんだくった。僕は、黙って駆け出した。
相変わらず、ペダルが重い。心臓は、バクバクと血液を身体中に送り出す。風は、氷の様に冷たいのに、身体は熱い。僕は、熱病に浮かされる様に、ペダルを漕いだ。自転車はのろのろと、九十九折を登って行く。九十九折の先には、青い空が見えた。坂の頂き。そこには、沙雪が待っている様な気がした。
坂の頂き。そこには、誰もいなかった。目の前に九十九折が下へと続きその先に、浜辺が有った。浜辺の先は、海。僕は、九十九折を自転車で、ゆっくりと下って行った。ゆっくりゆっくり下って行った。
冬の浜辺には、誰もいなかった。海からの風が、強い。聞こえるのは、風の音だけ。僕は、自転車から降りると風に逆らって、波打ち際まで歩いた。波打ち際に立つと、背中のディバックから、壜を取り出した。薄緑色の壜。口が広く、コルクの栓がしてある。僕は、アノラックのポケットから、亜里沙からぶんどった手紙を出した。壜の栓を外すと、手紙を押し込んで砂を詰めた。それが、終わるとコルクの栓を硬く閉めた。
目の前の海は、荒れていた。強い風に煽られる様に、波頭がうねっていた。波頭の向こうには、青い空。僕は、渾身の力を込めて壜を波頭に投げつけた。壜は、波に掻き消された。僕は、反対側の九十九折目掛けて駆け出した。後ろは、振り返らない。海の風は、氷の様に冷たかった。
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お知らせ その2
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