消えない原風景。
子供の頃、連れて行ってもらった旅行先でのワンシーンだ。
ドでかい旅館のロビーは沢山の観光客でひしめいている。
ワクワクしながら辺りを見回した時、ある人から目を離せなくなった。
今から思えば、恐らくプロテウス症候群。
頭の先にもう一つ頭がくっついてるような。
そう、映画になった「エレファントマン」そっくりの若い男性。

少し疲れたような両親に連れられながら明るく笑い
恥じるコトなく背筋を伸ばし、真っ直ぐ歩いてくる。
私は目の前に突っ立ったまま動けなくなった。
そして正直に言うと、「心底怖い」と思った。
その時。
周りに居たオッチャン、オバチャンが騒ぎだす。
「ホラホラ!見て!アレ」「うわぁスゴイ!」
ヒソヒソ、なんてもんじゃない。
指を差し、大声で仲間を呼んでまるで見世物扱い。
★
いまだにその瞬間の光景が忘れられない。
大騒ぎになるロビー、歓声をあげ駆けよって来る人・人・人。
顔を伏せる両親、取り囲む剥き出しの好奇。
(何だ・・これ・・・)
その時。
突然フラッシュが光り、一生消えない画が頭に刻まれた気がした。
ウソじゃない。
ホントにカミナリに打たれたような感じがしたんだ。
圧倒的な「不条理」がアホな小学生の頭に焼きついた瞬間。
(何故?何で?)
どうしてある人は生まれつき重い荷物を背負わされ
ある人は当たり前のような顔でノホホンと生きるのか。
(何故?何で?)
神様がいるって教えられてきたけど
じゃぁ何で世界はこんなにヒドいんだ?
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ジジィになった今でもちっとも分からない。
いつまでたっても画が消えない。
もしも霧を払うように誰かが答えをくれるなら
今すぐソイツの信者になってもいい。
たとえそれが四畳半一間の新興宗教だろうが、ゾロアスター教だろうが☆