ガキの頃、親戚連中が集まると決まって出前を取った。
寿司とかそんな上等なモンじゃなく、近くの「食堂」から。
焼きソバやチキンライス、鍋焼きうどんに卵とじ。
いつもの店の、いつものメニュー。
そしていつもの出前持ち。
配達してくれるオッチャンの首はほぼ45度に曲がっていた。
毎回、ヨロヨロと危なっかしく持って来てくれるオッチャン。
半身に麻痺があり呂律も怪しかったがいつも笑顔のオッチャン。
私も含め周りのガキどもはみんな、このオッチャンが大好きだった。
何故か?
答えは「カッコいいから」。
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オッチャンは若い時に川で溺れた子供たちを救うために
濁流に飛び込み全員を救ったスーパーマン、だった。
そして引き換えに一生残る障害を負ったヒーロー、だった。
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美談とかそんなのガキには関係ない。
ただ町内をニコニコとカブにまたがり走るオッチャンが
いつでも自分たちを守ろうとしてくれる人だって分かってただけ。
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派手な登場シーンもBGMもいらない。
「スーパーマンはそこにいる。」
今住む町にも。東北の被災地にも。
死ぬまでずっと食堂の出前持ちを笑って続けたオッチャン。
アナタからそれを学んだ☆