あの日のコトは良く憶えている。
夜明け前、近所中の犬が突然吠えだした。
狂ったような鳴き声に何かを感じて目を覚ました、次の瞬間。
ドーン!と寝ている背中を突き上げるような激しい揺れ。
マンション全体がゆさゆさ揺れて洗濯機が音を立てて倒れた。
「スゲェ・・」
揺れが収まった後、思わず呟きがこぼれる。
こんな地震は初めてだな。
縦に揺れたもんな。
寝ぼけた頭でまた、布団にもぐろうとした時、電話が鳴った。
「もしもしっ!大丈夫!?大丈夫だった!?」
西宮に住んでる昔の彼女からだった。
(何を切羽詰まった声で聞いてんの。大げさだなぁ)
「ん?あぁもちろん大丈夫だよ。結構揺れたけどね」
「うちは家が・・家が潰れちゃった・・」
(えっ・・)
「目の前の阪神高速も倒れてる・・」
(・・・・)

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何だかまるで現実感がないまま、とにかく家を出た。
電車が全てストップしてるので車で会社に向かう。
幹線道路の真ん中で軽トラがひっくり返ってる。
ジリジリするような渋滞。まったく動かない。
誰もが押し黙ったまま、硬い表情。
ようやくたどり着いた会社では、
同僚達がテレビにかじりついていた。
その画面の中。

大好きな神戸の街が燃えていた。
大切な人や場所や思い出と一緒に燃えていた。
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明日。
あの日から16年。
明日。
せめて目覚める時には
また新しい朝を迎えられる奇跡と
失ったもの達を静かに想いたい☆