誰が何を言おうと、私の中の三沢光晴という人への気持ちは何ひとつ変わらない。もちろん、そこには綺麗事だけではなく、共に過ごした時間のなかにはガッカリさせられた部分、それは違うだろ? と思わせられる部分も、まったくなかった訳ではない。
人間誰しも長所短所があるように、三沢さんと私の関係においても、すべてが完璧にうまくいっていた訳ではない。でもそういったマイナス部分を鑑みても、やっぱり私にとって三沢光晴という人は、私が接したプロレス界の人間のなかで最大の恩師であり、感謝してもしきれない人であることには何ら変わりはない。
そもそも、この連載をブログで始めるにあたって、私はかなり悩んだ。それはオフレコな部分で積み重ねてきた人間関係を、世間に晒すことって一体どうなのだろう?と自分自身のなかでの葛藤が常にあったからだ。
でも自伝のような連載はずっとしたいと思っていたし、何より私と三沢さん、小橋さんらがやってきたことは、自分の利を求めたものではなく、常に周りにいる人たち全体を含めた、皆もが一体となってより良い環境を目指そうという志の高いもの。
ならばその行動は誰に恥じることはないし、ためらうことなく、1人でも多くの皆さんにも知ってもらった方がいいのではないか?という結論に達して、書かせてもらうことにした。
また仮名を使ったフィクションとしての小説にしてしまえば、誰に気兼ねなく書くことができるかとも思ったこともあったが、前述の理由を考えれば、そこはノンフィクションにこだわらなければ、まるで意味をなさない。だから登場人物もすべて実名、あくまで事実にこだわって掲載させてもらうことにした。
私は旗揚げ時のNOAHに参加し、その会社を辞めて以来、プライベートで三沢さんに会うことは一度もなくなってしまった…。
そんななか、突然届いた訃報。またいつか、昔のようにくだらない話で大盛り上がりしながら、朝まで飲み明かせる日がいつかやってくるだろうと勝手に推測していたので、それは二度と叶わぬ夢だと思い知らされたとき、心の底から哀しみが込み上げて、頭のなかが空っぽになった気がした。
「今は今しかないんだから、過ぎ去ってしまえばすべて過去。だからいつでも、その瞬間瞬間を悔いのない生き方をしたいよね」
三沢さんの教えは、今でも私の心の奥底に存在している。だから三沢さん、私は今後もためらうことなく、その瞬間瞬間を悔いなく生きていきます。いつかあの世で、三沢さんとまた飲み明かせる日がくると信じて……。