東洋医学で考える ~味付けと健康・病気の関係②~ | ゴッドハンドではない鍼灸師の日々これこれ

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あすなろ院長が臨床で感じたこと、その他について気軽に書いていきます!(*^-^*)

前回の続き・・・

○ お酒を飲む場合や食べ過ぎる人(食べすぎた時)は酸味苦味のものを食べましょう。

酸味や苦味は熱を抑えたり、引き締める作用があります。漢方薬の胃薬も苦味剤ですし、七草がゆも苦い葉っぱが入ってますね。

これは食べ過ぎ飲みすぎによって胃に熱が発生したのを抑えるということなのです。

また、食べ過ぎたり飲み過ぎたりした次の日に下痢をするとすっきりすることがあると思います。

これは余分な食物や水分(湿熱といいます)を排出した(身体としては排出したい)からなんですね。

このように下して熱とることを東洋医学では瀉下法といいます。

 

◎みんな大好きケーキやお餅は甘味です。食べすぎにご注意!

甘味は読んで字の通り「甘い食べ物」ですが、穀物全般も甘味に含まれます。甘味と関係が深い臓器は”脾”です。

脾は東洋医学では胃や小腸など消化器の司令塔のような臓器で胃を働かせて食物を吸収し、気、血、津液(体内の水分)を生産するように命令します。

甘味は気、血、津液などのエネルギーになりますので、肉体労働により筋中の血が足りなくなったことで疲れやだるさなどの症状があるときには甘味を摂取すると良いのです。

また、緩める作用もありますので痩せて筋張ったや身体が硬くて怪我が多いようなスポーツ選手は積極的に”甘”の食物を摂取した方が良いです。

しかし、同じ元気がないでもデスクワークや長距離運転、ストレスなどあまり体を使わないのにだるい人には×です。このような人は肉体活動によって血を消費したというよりは、気や血が滞った状態なので辛味のものを摂ったり、カラオケに行ったり、運動して発汗するなどして発散すると良いでしょう。

甘味は気・血・津液になったり、緩ませる作用があるので中年になって体重が増加してきた方は摂取量に注意が必要です。いわゆる中年ぶとりは「腎虚」という状態で生命活動が低下したり、固まるのを好む腎の力が弱くなり、身体が緩んだ状態なので甘味を摂取するとますます緩んでくる(太ってくる)のです。

 

甘味のものには砂糖のほか、ご飯、パン、麺類などの炭水化物、穀物は○、砂糖は△です。

特にジュースやエナジードリンクなどに含まれている人工甘味料や果糖ブドウ糖液糖はできれば避けた方が良いです。

 

 

◎食欲を増す香辛料やコーヒーやお酒なんかも辛味に入ります。

辛味は発散作用があり、関係が深い臓器は”肺”です。肺は気を全身に発散させて巡らしたり、皮膚表面の防衛機能などに関係します。寒がりで風邪の引きやすい人は東洋医学でいう肺が弱っていることが多く、このような人は背中の毛穴が開いていたり、カサカサしていたり、いつもジトッと汗をかいてることがあります。風邪予防にマフラーをしたり、頚や背中にカイロを貼るのは東洋医学的にも理にかなっているのです。

気分が落ち込んでいる人や臥床が長期にわたると肺の発散する力が弱くなるため全身に気が巡らず、さらに発散を好まなくなって元気がなくなってきます。「憂悲が多かったり、寝すぎる(臥)と肺を悪くする」という考えからきています。

さて、辛味は身体が冷えて元気がない人、汗をかきにくい人(または最近かいていない人)、風邪の初期(背筋がゾクゾクし、寒気があり、汗が出ていない時期)などに食べると皮膚表面がポカッと温まって、軽く発汗して良いとされます。寒い日に辛いキムチ鍋を食べると体がとても温まりますよね。

これと似たように働く漢方薬が葛根湯ですが、7つの生薬の内、麻黄、桂枝(シナモン)、乾生姜(ショウガ)は五味では”辛”に分類されています。逆に食欲が亢進している人は、辛味はさらに胃熱を助長させ食欲が増しますので気をつけて下さい。たまに、異常に辛いものを欲する人がいますが、肝の病証で肝気鬱結証というストレスがたまっていることが多いようです(このような人は本当は酸味が適しています)。

 

辛味には唐辛子、ワサビ、など香辛料一般の他にネギ、ニンニク、カレーなどがありますが、性質で分けるとコーヒーや酒も辛味に入ります。

 

 

 

 

◎鹹味は塩分。塩と水の臓器腎との関係。昔の人は知っていた?

鹹味とは塩分の「塩っ辛さ」をいい水分を取り除いたり、緩めたりする作用があります。関係が深い臓器に腎があります。腎は泌尿器や生殖器、呼吸器などと関係が深く、さらに両親から授かった生命力は腎の中の命門(腰の真ん中)に蓄えられ、一生を通じて消費していきますので成長と老化に切っても切れない臓器です。

腎は「水の臓器」で適度な水分を得て堅まっているのが良い状態です。例えるならば生の大根のようなものです。この腎を適度な硬さにしているのが腎気であり、鹹味になります。つまり腎気や鹹味は腎から水分(津液)を取り上げて、堅くなりすぎないようにしています。例えるなら大根やキュウリ、白菜に塩をかけると適度に水が抜けて軟らかくなるようなものです。

昨今は塩分の取りすぎに関して色々言われますが、例えば塩分の取りすぎによって血圧が上がるのは

鹹味を摂取しすぎると血の水の部分が取り上げられるので血が粘る(血虚、血熱)るため、血圧が上がると考えます。鹹味を摂り過ぎると、水が飲みたくなるのは腎が緩くなり過ぎるので、水分を摂り硬くなろうとする為であります。逆に鹹味が少ないと水が多くなりすぎるので、身体が冷えます。東北など寒い地域の人が塩分を多く求めるのはそのためだと考えられます。

ただし、最近は温暖化のために、東北でも寒い日も減少しているので塩分の摂取は昔ほどは要らないかもしれませんね。