交通事故の患者さんから連絡がきた ー保険会社の真実ー | ゴッドハンドではない鍼灸師の日々これこれ

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あすなろ院長が臨床で感じたこと、その他について気軽に書いていきます!(*^-^*)

本日、あるお電話をいただきました。

それは、「交通事故に遭ったのですが、そちらで治療したいのですが宜しいですか?」

というものでした。

 

この手の電話は、本当にいつも心苦しくなります。

「分かりました。それでは保険会社にその旨伝えてください」と言って電話を切ると、

その後保険会社や患者さんから電話がかかってくることは二度とありません。

 

それは、保険会社が決まってこう言うからです。

「鍼灸では治療費をお支払いすることは出来ません」

「鍼灸は自賠責保険が使えませんから」

 

とこう言われ、患者さんは

そういうものかと納得して、整形外科や良くても接骨院の治療が許され、

そこに通うことになります。

 

その後、患者さんが保険会社に連絡してようで、

保険会社から直接私のところ電話がありました。

 

保険会社 「そちらの治療院は接骨院ですか?」

私     「いえ、当院は鍼灸院ですが」

保険会社 「鍼灸は自賠責保険の対象外なのですが・・・」

私     「なぜですか? そのような法律はありますか?」

保険会社 「えっ? いや法律と言われましても・・・そうなっているので・・・」

私      「何を根拠にそうなっているのか教えてください」

保険会社  「・・・・・・・・・」

 

というやり取りをして、話しをうやむやにされ電話を切られました。

 

では本当に鍼灸は自賠責保険が使えないのでしょうか?

保険会社の担当の方が言うように鍼灸は自賠責保険の対象外なのでしょうか?

 

「自動車損害賠償保険法 第十六の三」には次の文言が書かれています。

保険会社は、保険金等を支払うときは、死亡、後遺障害及び傷害の別に国土交通大 臣及び内閣総理大臣が定める支払基準に従ってこれを支払わなければならない。 

と、こう明記されています。

 

では支払基準とはどういうものでしょうか?

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準 

平成13年 金融庁・国土交通庁省告示第1号

1 積極損害 

 (1) 治療関係費

  ⑧ 柔道整復等の費用 

  免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。

とあります。

 

つまり、自動車損害賠償責任保険法の支払基準には、

柔道整復師(接骨院など)以外にもしっかり我々、鍼灸師やマッサージ師の施術も対象になっていることが分かります。

 

自賠責保険は、自動車損害賠償保障法が施行された1955年(昭和30年)に、「交通事故が発生した場合の被害者の補償」を目的として開始された対人保険制度である。
あらかじめ全ての自動車保有者が自賠責保険に加入することで、交通事故の被害者は「被害者請求制度」を使い、加害者を介さずに「最低限の損害賠償金」を直接受け取ることができる。

 

傷害による損害では、ケガにかかった治療費をはじめとする諸費用に対する補償として限度額は120万円。
後遺障害による損害では、ケガによる労働能力の低下および精神的苦痛に対する補償として限度額は4,000万円。
死亡による損害では、逸失利益のほか、葬儀費、慰謝料が支払われます。 限度額3,000万円。 

 

また、「鍼灸施術するには医師の同意がいるんですけどね・・・」と言われる場合がありますが、

これも

-自動車損害償保障法及び自動車損害賠償責任再保険特別会計法の一部を改正する法律の施行等に伴う政令、省令及び関係通達等の制定及び改正並びに支払基準の制定に関するパブリックコメントの結果について-  

平成13年12月13日 国土交通省・金融庁

意見:鍼灸治療に係る医師の同意の要件を外すべき。    

回答:支払基準ではそのような規定を設けておりません。

 

とあり、鍼灸治療を受けるか否かには、医師の同意は要らない

と回答されています。

 

以上より、

鍼灸治療は自賠責保険で受けることが可能であり、医師の同意は要らないことが分かります。

 

ではなぜ保険会社は自賠責保険から鍼灸を外そうとするのでしょうか?

これは、例えば交通事故でケガをした場合の限度額は120万円ですが、

その中ですべてを済まされるのであれば保険会社は支払いはありません。

 

保険会社が整形外科のみの治療に固執するのは、

接骨院や鍼灸での治療をすると整形外科で治療する場合よりも治療費が多くかかり、

保険会社に損害が出る可能性があるからだということでした(知り合いの保険会社社員曰く)

 

なので、接骨院での治療をする場合は、

保険会社は施術の料金一覧を提示し、それの乗っ取り治療費を請求して欲しいと言ってきます。

 

この治療費ですが、

「免許を有する柔道整復師、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費用は、必要かつ妥当な実費とする。」とあります。

必要かつ妥当な実費とはいくらのことでしょうか?

これはだいたい”労災基準 の 1.5 倍~2倍が上限の目安”と言われています。

 

 労災保険あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師施術料金算定基準の一部改定について

基発0927第3号令 和 元 年 9 月 27 日

によると、

施術料:はり・きゅう 2術(はり・きゅう併用)の場合  1日1回限り 4,050 円

     はり又はきゅうとマッサージの併用      1日1回限り 4,050円

に改定されています。

つまり、1.5~2倍だとすると6,000~8,000円が上限となります。

 

整形外科での治療はいくらかは分かりませんが、私がまだ鍼灸接骨院をしていた時は、

ケガをした部位の数にもよりますが、だいたい同じくらいか、少し低かったかもしれません。

 

因みに当院で、現在、交通事故で通われている患者さんに請求しているのは、

当院治療費の定額の5,500円で、倍掛けはしていません。

 

保険会社の社員さんがなぜこのような嘘をつくのか?

ここからは私の想像ですが、患者の言うように、治療院の言うように支払っている社員は出世しません。

いかに、高い保険に加入させ、支払いを少なくできるかはその社員の腕の見せ所です。

 

あの手この手で、患者に嘘をつき諦めさせるか、その手腕によるのです。

ケガをした患者さんのことを親身に思い、良くなるように自由に治療を受けさせてしまい、

支払額が大きくなり、敷いては自賠責額を超えてしまい、会社が支払うようになってはいけないのです。

そのようなマニュアルが存在するか、教育を受けるのでしょう。

保険会社も企業ですから、損失は出来るだけ抑えたいですからね。

 

保険会社の言い分も分かるところもあります。

例えば、マッサージを受けたい人は、良くなっても長い期間マッサージを受けたいと思う患者もいるかもしれません。

 

実際、整形外科では電気治療が中心ですが、接骨院ではマッサージをしてもらえるために長くかかる傾向があります。

良くない接骨院などは、出来るだけ治療費をいただくために、治療を長引かせるところもあると言います。

 

もし、接骨院や鍼灸院の治療を受けることで、治療期間や治療費用が少なくなれば、

保険会社の方から積極的に勧めるだろうと思いますが、現在はそうなっていません。

 

我々も技術で、それを証明できればいいのでしょうけどね。

 

その患者さんのその後ですが、

電話してみると、

「先生にご迷惑をお掛けするかもしれませんので、別のところに行きます」とのことでした。

 

いつも交通事故の電話をいただくと、本当にむなしい気持ちになりますね。

 

ケガをして、身体も心も痛めている患者さんを救ってやれないむなしさや、

素人である患者さんに嘘をつく保険会社は許せません!!

 

今回、一人でも保険会社の真実を知ってもらえればと思います。

そして、鍼灸やマッサージは自賠保険で受けることが可能であることを知ってもらえればと思います。