私が「ここで覚えたものを患者さんに色々実験していきたいです!」と言ったコメントが先生の逆鱗に触れたようでした。
患者さんは実験材料ではない!そのような態度で臨床するんじゃない!ということでした。
今考えれば当たり前のことです。
当時も今と同じで患者さんを実験材料とは一度だって思ったことがありません。
ただし、我々臨床をするものは日々治療法を勉強し、患者さんに試していってこそ臨床力が向上するものです。
時には失敗し、そして成功したものを自分の技術に出来るものです。したがって、臨床力の高い治療家の先生は大なり小なりその治療の仕方や技法が変化していくものです。
失礼ながら、昔と同じ治療をしている先生は治療が進化していないと考えてもいいでしょう。
今思うと、その時の私の言い方や雰囲気に何かマズイものがあったのでしょう。
当時は頭をハンマーで殴られたくらいの衝撃がありました。
M先生ははっきりとものをいうタイプの先生でしたから、研修生からは少しとっつきにくく怖いという見方をされることが多かったようです。
実際に素人のような浅はかな質問をすると怒られました。
しかし、私にとってそれはどの先生にもないオーラが出ていたように見えました。
そして、教官決定の日
私はK先生と・・・M先生に指導教官をお願いいしました。当時非常勤であった水戸で開業なさっているN先生には期間限定で指導していただくことになりました。
M先生は鍼灸師として食べられるようになれ!そのための臨床力をつけろ!
と口を酸っぱくして言われていました。
研究畑のM先生でしたがそのハリの操作の滑らかさは当時評判のK先生とは異なった職人芸のハリ裁きでした。
特に切皮の速さは目を見張るもので、滑らかな速さでドンドン背中にハリを打っていく姿は今も思い出されます。
「やみ雲に打つんじゃない、ハリ一本を大事にしろ」
「とにかく患者さんの触れてからハリをしろ」
「悩みすぎるな、分からなかったらハリをしてみろ」
短いフレーズですが、強烈な言葉を繰り返し繰り返し研修生に話しかけていました。
今でもふと頭によぎるM先生のメッセージです。