ゴツプロ『無頼の女房』観劇

 無頼派と言われた作家・坂口安吾とその妻・三千代をモデルとした塚口邸での日常を描いた中島敦彦の作品である。気まぐれで狂気じみている塚口圭吾から原稿をもらいに毎日訪れてくる編集者たちや何かと出入りする小説家たちは塚口に翻弄されるが、妻のやす代やお手伝いの多喜子らは肝が据わっている。そんな中、何度も自殺未遂を試みる塚口に子供ができる。そこに長崎のきのこ雲を見たやす代の夫が作家になりたいと志願してくる。

 ドタバタ劇でありながら、「生きる」意味、この世での「存在」意義を問うてる舞台である。

 各場のブリッジに和太鼓が奏でられ、それが場面終わりの登場人物の心情を表現している。田中敏恵の美術は見た瞬間にワクワクさせられ、うまく2階や奥の庭を利用し、塚口に振り回されている周囲の人たちの同線の幅を広げた。そして、行き詰った時にふとした一言で場を和らげる不思議な雰囲気を醸し出すやす代を演じたかんのひとみが良い存在感を出していた。