文学座『アラビアンナイト』初日観劇

 髙瀬久男演出の『アラビアン ナイト』が面白いと耳にしスペース・ゼロで上演されるから観に行こうとしたものの大人気でチケットを取ることができず、

長年再演を待っていた。2002年青山円形劇場で初演、その後2008年までに全国を周り221回上演された作品である。「ファミリーシアター」と銘打ち、親子で楽しめる舞台作品を提供することから、確か土日や祝日の公演日では制作スタッフも「日曜のお父さん」が着るようなラフな格好で迎え入れたと聞いたような気がする。約20年、待ちに待った再演である。

 演出は五戸真理枝に変わり、劇場空間もアトリエという小空間へと移り、新たな『アラビアン ナイト』が幕を開けた。文学座は夏休みによく子どもを対象とした公演やワークショップを手掛けており、 今回もGW期間中の初日から3日間はファミリーデイという通常公演の一部がカットされるが未就学児も観劇できるシステムとなっている。開場してから児童を交えてのジェスチャーゲームを行い、子どもだけでなく大人も共に開演まで楽しめる空間を創り出していた。「アリババと四十人の盗賊」や「船乗りシンドバッドの冒険」などよく知られている物語を簡易的な装置で以って人形や影絵などを使用してで紡いでいく。冒頭では何人かの未就学児の泣き声などにセリフをかき消されないよう俳優は言わなければならなかった。そんな状況に恐らく出演者も観客も通常以上の集中力を要したであろう。が、観客に子どもたちが存在するため舞台と観客の境界線が曖昧となり、子どもの素直な反応に空間一帯が笑いをもたらすこともあった。それは小空間だったからこそ生み出された一体感であったのかもしれない。