舞台『ハザカイキ』観劇

 三浦大輔作・演出、丸山隆平主演の舞台『ハザカイキ』を観劇。芸能記者である菅原裕一(丸山)が国民的人気タレントの橋本香(恒松祐里)を追いかけ人気アーティストの加藤勇(九条ジョー)との熱愛をスクープする。しかしそのネタを提供したのは香の友人・野口裕子(横山由依)だった。菅原も香もそれぞれ追う、追われる中で周囲の人々を巻き込み、菅原に至っては予想もしていなかったことが彼を襲うことになる・・・

 アイドルとして第一線で活躍している丸山が、おそらく菅原のようないては欲しくない芸能記者を演じる皮肉さが冒頭から感じられる。セリフの要所要所に「時代」という言葉が使われ、まさに時代の入れ替わりの時期(端境期)が芸能の世界で起きていることを物語っている。あまりにも敏感になりすぎていることに警鐘を鳴らしているかのように思える一方で、今まで当然と思っていたことが芸能界だけでなく社会一般として無くさなければならないことも提示している。頭では分かっているが行動に移せないもどかしさ、分かったふりをしていながら心の中では理解しきれていない稚拙さ、分かってもらいたいが世間的にはいまだ理解されない不甲斐なさなど、様々な思いが交錯している。

 丸山の調子の良い始まりの件から、後半転落していく様の変貌は見応えがあり、記者会見の膨大なスピーチを恒松は見事にやり遂げた。菅原に好意を抱きながら友人の振りを続ける今井伸二役の勝地涼や、香の父であり事務所の社長でもある橋本浩二役の風間杜夫、香の母の智子役の大空ゆうひらが舞台全体に大きなエッセンスを与えていた。