劇団青年座『シェアの法則』観劇

 2021年1月、ちょうどコロナが浸透し始めた頃に初演を迎えたこの舞台は、全国を回り、再び東京に戻ってきた良質な舞台である。

 1軒のシェアハウスを舞台にそこに住む人々の生活が描かれている。青年座は新たな良い劇作家を発掘した。「戦争や差別など社会的問題を背景に盛り込みながらも、笑って泣ける温かい作品が特徴。」と劇作家・岩瀬顕子の紹介がされている。まさに『シェアの法則』は親子の価値観の違い、シングルマザー、外国人技能実習生、震災で婚約者と生き別れ、などの社会的問題を登場人物一人一人に背負わせながらも、笑って泣ける温かい作品であった。みんなそれぞれ訳アリ人物でありながら、その苦悩と格闘しつつも前に向かおうとする姿勢が清々しい。

 堅物な大家の主人を演じた山本龍二、何気にシェアハウスの主となっている隣人役の岩倉高子、そして何より片言の日本語を話す中国人を演じた黒崎照は特筆に値する。演出は須藤黄英。

 こうした良質な舞台が俳優座劇場で観られなくなるのも悲しい。