文学座『夏の夜の夢』観劇

 シェイクスピア喜劇作品の中で割と日本でもなじみのある『夏の夜の夢』、文学座はシェイクスピアの持つ言葉遊びを活かしながら「夢と現実」を恋愛や演劇を通して丁寧に描いた。パーカッションの生演奏、真っ白な三枠の額縁というシンプルな美術にキャンドルアートを駆使した映像が加わり、幻想的な世界を創り出した。特に中央に映し出される円は森でもあり、目でもあり、地球でもあり月でもあり、夏至に何かが起こる兆しを暗示している。ここ数年コロナの影響で客席からのセリフは以ての外、登退場も阻まれていたが、今回は思う存分に客席も活用しこのカンパニーの楽しさを共有することができた。

 池田倫太郎、奥田一平、平体まひろ、渡邊真砂珠の4人の若手が大奮闘しており、4人の追いかけっこが真剣であるが故に面白い。ベテラン勢が劇中劇の役や妖精役を担い、しかもパックまでもがベテランの中村彰男が担うという衝撃的な配役であった。しかしそれが「夢と現実」をより一層明確化したのではないかと思う。

 終演後はアフタートークもあり、若手から中堅、ベテランと幅広い年齢層の座組で40日間の稽古の中で築き上げられた信頼性を感じることができた。

 鵜山仁演出。2023年7月7日まで、紀伊國屋サザンシアターにて。