舞台『パラサイト』観劇

 アカデミー賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』を鄭義信が脚本化、演出した作品。舞台をソウルから90年代の関西に移し、より日本人が共感得やすい設定として描かれている。バブルがはじけそれ以降の日本は格差社会がより鮮明化され現在に至る。特に90年代は上も知らなければ下も知らない中所得者が多い中で、この状況にきちんと向き合っていなかったからこそ、今、日本は先進国の中で他国と引き離されている現実を突きつけられているような気がする。

 鄭義信自身格差社会を目の当たりにしてきた作家であり演出家であるため、「格差問題」という重いテーマでありながらふんだんに笑いを織り交ぜ、展開していく。笑いの部分は3度やるという鉄板の法則を用いながらも俳優たちが自由に演じている所に尚一層笑いが込み上げてくる。開演前から出演者たちが舞台に立ち、トタン屋根の集落の日常を描くところから始まる。日の当たらない集落と高台に建つ豪邸、そして半地下を盆を半回転するだけでものの見事に世界観が変わることに驚きを感じた。そして古田新太、江口のりこ、宮沢氷魚、伊藤沙莉というなんとも濃い俳優たちの一家と家政婦のキムラ緑子の演技は見どころ十分である。

 初めてMILANO-Zaに足を踏み入れたが、終演後すぐに時間差退場の声掛けが劇場の空間に水を差す形となってしまい残念だった。