舞台『シッダールタ』観劇

 ヘルマン・ヘッセの小説を長田育恵が脚色、白井晃演出により草彅剛演じるシッダールタの悟りを得る過程が描かれている。

 元々観劇する予定ではなかったが、SNSで一部の映像を見た時に「これは見なければ」と感じ慌ててチケットを手に入れた作品である。打楽器スチールパンのような大きな半円形が舞台上に置かれ、俳優たちがその側面を這い上ったり、這い降りたりしている映像だった。実際打楽器の音楽と共に俳優たちが昇り降りをしている姿は人の心の彷徨いを連想させるものであった。縁には砂が飾ってあるが、舞台が始まるとその砂が舞台中央に広げられ、一気に砂漠へと景色が移り変わる。また側面に現代の映像が映し出され、時に美しく、時に儚さが表現されていた。

 抽象的な舞台に観念的思想が掲示され、「自分とは何か」を観劇中そして観劇後も考えさせられる舞台であった。