39年前に福井で女子中学生が殺された事件。

有罪とされて服役を終えた前川彰司さんが、

再審で無罪になった裁判で、

検察は上告を断念して、

無罪判決が確定した。




事件の概要はこちら


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250723/k10014871921000.html




冤罪事件が起きる度に思うのが、

冤罪被害者とその家族の人生を破壊するだけではなく、

そのせいで真犯人を捕まえる事ができなくなり、

事件の被害者とその家族の無念をも晴らせなくなる、ということ。


今は殺人には時効は無くなったけれど、

1986年に起きたこの事件は、

当時の規定で2001年に既に時効になっている。

つまりこの中学生を殺した犯人は、

もう永遠に捕まえる事はできないのだ。



検察も警察も、

誰でもいいから犯人を作ればいい、と思っているのではないか?と疑いたくなる時がある。

だが真犯人でなければ、

被害者にも家族にも、

何の意味も無いというのに。



戦後すぐ等は、

本当に酷いでっち上げがまかり通った事件が数々あったが、

39年前、ということは、

昭和でも一番終わりの方だ。

その時でもまだ、

こんな事をしていたのか、と思うと、

暗澹たる気持ちになる。


証拠を捏造したり、

証言を誘導したり、

警察も検察も何も変わっていないのか。



取り調べの可視化が言われて久しい。

実際、2019年6月1日から、

一部の事件で義務化もされた。

具体的には、

裁判員裁判対象事件と、

検察官独自捜査事件で、

逮捕・勾留されている被疑者の取り調べの全過程が録音・録画されるようになった。


だがそれ以外の事件では、

録画録音できるにも拘らず、

敢えてなのかわざとなのか、

されていない事が多いし、

任意の取り調べでは義務化されていないので、

その時点で既に不適切な取り調べで、

自白を強要されている可能性もある。


警察や検察は、カメラの前では供述が得にくい、と言うが、それはおかしい。

真実であれば、

カメラの前であろうと無かろうと、

供述は得られるはず。 

得にくくなるのは、

脅したり高圧的な取り調べがしにくくなるからだろう。



冤罪を生む土壌を考える時、

もう1つ問題がある。


それは警察も検察も、

全ての証拠を提出しなくてもいい、という点だ。


彼らは自分達でストーリーを作って、

それに当てはまる証拠だけを提示する。

捜査の過程で、明らかに矛盾する証拠が出てきても、

それが被疑者に有利に働く内容なら隠すのだ。


そういう証拠が出てきたら、

普通は無実かもしれない、と考える物だと思うが、

彼らはその証拠の方が間違っている、と都合よく解釈し、

封印してしまうのだ。


今は弁護士が、証拠開示請求をする事ができるが、

そもそもどんな証拠があるのか知らなければ、

開示請求すらできない。


冤罪が蔓延り、

更に再審のハードルが異常に高いのは、

警察や検察が隠した無罪の証拠を、

被疑者側が自分達で見つけて、

証明しなければならない事にある。



こんな事をやっているから、

いつまで経っても冤罪が無くならない。

減らす為には全ての取り調べを録音録画し、

尚且つ全ての証拠や供述の提示を、

義務づけるべきだ。

 


警察や検察の仕事は、

犯罪を取り締まり、

犯人を見つける事であり、

犯人を「作る」事ではない。


冤罪事件が次々明るみに出て、 

無罪確定が続いた事で、

日本の取り調べの在り方を、

少しは考え直そうという機運が出てはいる。



再審法改正への動きもその一つだ。

だが、本気で冤罪を減らそうとするなら、

まず裁判所が再審開始を決定した時に、

検察が異議申し立てをする権利を、

剥奪すべきだろう。


有罪判決を出した裁判所が、

その判決に疑義を表明しているのに、

検察が横槍を入れるなど、

あってはならない。

自分達の主張に自信があるなら、

堂々と再審で再度有罪を主張すれば良いのだけの話。


だが現実には、

再審のハードルがとてつもなく高い為に、

裁判所が再審開始を決定する事など極めて稀で、

逆に言えば、再審が始まれば、

ほぼ100%、無罪になる。


それが分かっているから、

検察は何としても再審開始を阻止しようとして、

異議申し立てをする。


だがそれは何の為なのだ?


検察の面子の為?

かつて有罪に持ち込んだ、

検察官の名誉を守る為?


下らない。


そんなことの為に、

長年人生と自由を奪われ、

時には命の危機と直面しなければならなかった冤罪被害者とその家族の苦痛と苦悩に比べれば、

一顧だに値しない。


冤罪被害者の人権を考えれば、

とてもそんな非道な事はできないはずなのだが、

検察の検、は、権力の権、の間違いなのではないか?

権力持ったと勘違いして、

冤罪被害者の人権など、

物の数にも入れていないのだろう。



今回もまた、悪質な冤罪事件が白日の元に晒された。

昔よりは少し、

冤罪を認める良識が出てきたとは思うが、

まだまだ表沙汰になっているのは氷山一角だろう。

その陰で泣いている冤罪被害者は、

恐らくまだまだいる。



法務省は、法制審議会に諮問し、

再審制度の見直しを検討する方針、なんていう、

まどろっこしい事ばかり言ってないで、

さっさと進めるべきだろう。

刑事訴訟法における再審規定を、

70年以上改正して来なかった怠慢を、

いつまで維持し、

被害者を増やし続けるつもりなのか。