当然と言えば当然。
むしろ控訴した事自体、
厚顔にも程がある、と思っていたので。
地裁の判決についてはこちら
この事件、元々軍事転用などできないのに、
軍事転用可能な噴霧乾燥機を無許可で輸出したとして、
外為法違反容疑で大川原正明社長ら3人を逮捕した、というもの。
ところが起訴した後、
本当に軍事転用など出来ない事が証明され、
公判が維持できない、と、
初公判直前になって起訴を取り下げる、という、
何ともお粗末な結果となった。
そしてこの事件では、
単なる冤罪だけではなく、
警察と検察と裁判所は、
もっと重大な罪を犯している。
逮捕直後から兵器転用は不可能、と訴えていたにも関わらず、
思い込みによる冤罪を曲げず、
否認を続けるからといって保釈も認めなかった。
結果的に勾留中に進行性の胃ガンが見つかった、
顧問だった相嶋静夫さんは、
8回にわたる保釈請求を認められず、
適切な治療が遅れて4か月後に亡くなっている。
即時保釈して適切な治療を受けていれば死なずに済んだかは分からない。
だが少なくとも、ストレスの多い拘置所の中で、
禄に治療も受けられなかった事が、
命を縮めたのは間違いないだろう。
だがこれまで、警察も検察も、
保釈請求を認めなかった裁判所も、
誰一人として反省もなく謝罪もしなかった。
今回、東京高裁が、
公安部が必要な追加捜査を怠って逮捕に踏み切り、
地検も通常要求される捜査をせずに起訴したと判断。
一審東京地裁に続き、
一連の捜査の違法性を認定し、
捜査に当たった複数の現職警察官が、
事件について「捏造(ねつぞう)」「問題があった」などと証言した事を、
「重く受け止めるべきだ」と指摘した事で、
漸く「おわび」を表明し、
直接謝罪する事にしたらしい。
そして警視庁も検察も、
捜査の問題点を検証し再発防止策をまとめるための検証チームを設置するという。
これまた当然と言えば当然の話で、
簡単に冤罪を作られては堪らない。
だがこの話の中に、
裁判所が出てこないのは納得行かない。
否認していれば保釈を認めない、という前提がそもそもおかしい。
逮捕直後なら証拠隠滅や口裏合わせの恐れ、も分かる。
だが実際には逮捕から半年以上が過ぎており、
逮捕から3週間後の2020年3月に起訴しているので、
つまり起訴からも半年近く過ぎていた訳だ。
相嶋氏については、
胃ガンが見つかった事で、
一時的に勾留停止にはなったものの、
勾留中という立場のままだった為に、
すぐに手術を受けることができず、
手術が可能な病院を探さねばならなかった。
その為に入院は更に遅れ、
診断から2ヶ月が過ぎていた。
進行性のガンである事を考えれば、
証明は難しいだろうが、
その2ヶ月が致命的な遅れになっていたとしても驚かない。
また人権、という観点に立っても、
これ程酷い人権侵害があるだろうか。
結局相嶋氏は、刑事被告人で勾留中という立場のまま亡くなった。
他の2人についても、
漸く保釈が認められたのは逮捕から11ヶ月後で、
その時も検察は反対し、
保釈が認められた後も再度準抗告をして、
保釈を阻止しようとした。
全く意味が分からない。
検察は人の命を何だと思っているのだ。
勾留を続けていれば、
被告達が武器転用が可能で、
分かっていて輸出しました、とでも言うと思ったのだろうか。
現実にできもしない絵空事を押し付けようとしたって、
そうです、などと言うはずがないのに。
今後どんな検証がされようと、
起きてしまった事は変わらないし、
相嶋氏の命も戻らない。
その上、今回の損害賠償請求で、
1億6000万の支払いが確定したが、
その出所が税金である、というのが、
これまた納得できない。
ありもしない犯罪をでっち上げ、
無辜の国民を苦しめ続けた、
警視庁公安部の警官や地裁の検察官達に支払わせるべきではないのか?
少なくとも幾らかは身銭を切って、
痛みを共有すべきだろう。
彼らは実名が出ることもなく、
異動になればやらかした事を知られることもなく、
口を拭っておしまい、だ。
大川原化工機の社員の中には、
理不尽な取り調べを繰り返しされて、
鬱を発症した人さえいると言うのに。
冤罪の原因を作った者には、
もっと厳しい罰をあたえるべきではないか。
少なくとも間違ったら自分にも大きなペナルティが課せられる、と思えば、
慎重にもなるだろうし、
功名心に走った思い込み捜査は減るだろう。
警察も検察も、
大きな権力を与えられている。
だが大きな権力には、
それ相応の責任も伴っていることを、
もっと自覚して貰いたい。
相嶋元顧問の御冥福をお祈り致します。