58年前に起きた事件で、

47年7か月に渡って拘禁されてきた、

袴田巌さんの無罪が漸く確定した。

10日の控訴期限を待たずに、

控訴を断念する、と、最高検が今日発表した。





だが、談話を発表した、

最高検察庁の畝本直美検事総長は、

この期に及んで静岡地裁の無罪判決について

「判決は多くの問題を含む到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容と思われる」と言った。

その一方で

「袴田さんが結果として相当な長期間にわたり、

法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致し、

熟慮を重ねた結果、

検察が控訴するのは相当ではないとの判断に至った。」のだそうだ。


控訴しても上告しても、

勝ち目が無い事だけは、

理解したらしい。

今更だが。



そりゃまあ検察としては、

絶対認めたくない判決だったのは間違い無いだろう。

だが認めたくなくても、

何度も証拠の捏造を、

それもかなり強い言葉で認定され、

世論も既に認めているのだ。


いつまでも往生際悪く、

未練たらしく、

抵抗を続けてきたのは検察だけで、

検察以外の日本人は皆、

かつて判事だった人も含めて、

とっくに無罪認定している。


そんな、間違いを決して認めない、というやり方で、

検察の権威を守れる、と考えているなら、

間違いも甚だしい。



もっともこの検事総長、

「袴田さんが長く不安定な状況に置かれたことについて、刑事司法の一翼を担う検察としても申し訳なく思っております」と謝罪し、

再審請求の手続きが長期間に及んだことについて、

最高検察庁で検証を行う考えを示したそうで、

一抹の良心はあるらしい。



本当に何故こんなに時間がかかったのか、については、

検証が必要だろう。

たまたま袴田さんが長生きしてくれたから、

生きている間に無罪を勝ち取れたけれど、

58年もかかっていたら、

大抵の被疑者は鬼籍に入ってしまう。



と同時に、再審のあり方についても、

考え直すチャンスだ。

捜査機関は間違いや捏造をしない、という前提が崩れたのだ。


今は録画などの可視化で、

昔程の滅茶苦茶な取り調べは減っていると思うが、

それでも自白の強要は今も、

恐らく行われている。


大体が自白が証拠の王様、なんていう前時代的な盲信を続けてきたから、

何がなんでも自白を、となる訳で、

その為に手段を選ばない体質が出来上がってしまった。

 

だが、この科学捜査の時代、

自白よりも大切なのが、

証拠の積み重ねであるのは当たり前で、

まあ科捜研のマリコさんみたいな人は、

なかなか現実にはいないだろうが、

それに近い検証をしている人はいると思う。



そして、全ての証拠の開示を、

当たり前にすべきだろう。 

検察が自分達の作り上げたストーリーに合わない証拠は隠し、

合うものだけを提出する事が許されてきたからこそ、

冤罪が多く生まれたのだ。


今は弁護側が証拠の開示請求をできるようになってはいるが、

本当に全ての証拠が開示されるとは限らない。

都合の悪い証拠は隠されて、

無いものは出せない、と言われてしまえば、

真偽を追求するのは難しい。


だから、検察官には、

開示請求をされた証拠は過不足無く提出する義務を負わせるべきだし、

後に見つかったり、

隠していた事が発覚した場合は、

懲戒処分を受ける位の罰則規定も必要だろう。


袴田裁判から何を学ぶか。


検察は認めるべき非は認め、

是正すべきは是正し、

公明正大な組織たるべく、

改革と努力しなければならない。

でなければ、袴田さんの半世紀以上の時間が報われない。


と同時に、検察は今だ証拠の捏造を認めていないが、

何故そんな事になったか、という検証は、

時間がかかった事以上に重要ではないか。

そこに目を瞑ってスルーし続けたら、

また同じ過ちを繰り返すよ。


実際、元厚労省の村木厚子さんの時も、

検察は証拠の改竄をやり、

それが発覚して、

村木さんは無罪になり、

担当検事3人は逮捕、起訴され、

証拠隠滅と犯人隠避で有罪になっている。


この時にちゃんと事実を認定し、

同僚を取り調べて立件したから、

検察も少しは自浄作用があるんだな、と、

国民は思った訳で。



検察は国家権力の最たる物なのだ。

その強大な権力を適正に使う為には、

自らを律する力もまた、

強大でなければならない。

 


もう一度言う。

この事件から、何を学ぶか。



まずは潔く間違いを認め、

反省と検証するところから始めて貰いたい。



弁護団は当然ながら、

刑事補償を請求するし、

判決で捜査機関によって証拠のねつ造や、

非人道的な取り調べが行われたと指摘されたことから、

検察や警察の責任を追及するために、国と静岡県に損害賠償を求める訴えを起こすことも検討しているそうだ。


どんどんやればいい、と思う。

刑事補償は長い拘束への当然の権利で、

期間が長いだけに認められれば総額二億を超え、

過去最高額になるとも言われている。


ただ、2人の年齢を考えれば、

「速やか」でなければ、

いくら貰っても使う時間が無い。

お金で失われた時間と人生は取り戻せないけれど、

せめて国は一刻も早く支給してくれ。


損害賠償請求も、

2度とこんな冤罪を作らない、

証拠捏造をしない、という、

戒めになるだろうから、

やった方がいい。



そして袴田姉弟には、

心穏やかに、余生を楽しんで欲しい。

その為にも、お金は幾らあってもいいし、

弁護団にはもうひと頑張り、

大急ぎでやって貰いたい。



関係した皆さん、

ひとまずお疲れ様でした。

そして袴田さん、

せめてここから、

楽しく暮らして下さいね。