埼玉県の自民党県議団が提出しようとしていた、

「虐待禁止条例案」が、

提出前に撤回された。


当たり前だろう、とは思うが、

そもそもこんな条例を出そうとしていた事自体、

見識を疑う。



昔暮らしたアメリカでは、

州によって違うようだが、

我が家が暮らしていた所は、

12才になるまで、

子供だけの留守番は、駄目だったし、

通報されたら親が虐待で逮捕される、と言われた。


だがそれは、アメリカの子供の行方不明者が、

年間36万人もいる、という現実があるからだ。

実際、人身売買や臓器売買の為に、

誘拐される子供は後を断たず、

一旦行方不明になると、

まず出てこない。

戸籍も無いから、

子供が欲しい人が、

出生証明書だけ偽造して州を跨げば、

見つけるのはほぼ絶望的だ。


毎週、新聞の日曜版や、

ウォルマートの様な大きなスーパーには、

行方不明の子供を探すチラシが、

入れられたり貼られたりしていた。

その数の多さにゾッとしたし、

この国で子供から目を離すことは、

確かに虐待、と言われても仕方ない状況なのだ、と納得もした。



だが、日本の様に、

年間に行方不明になる子供は1000人程度で、

その大半が迷子や家出で、

無事に見つかっている国が、

アメリカ並みに留守番は虐待、と言い出すのは馬鹿げている。


大体、埼玉は学童保育の待機児童が、

全都道府県で1番多いらしい。

しかも学校で全ての学童を運営していて、

放課後の移動が必要ないならともかく、

そうでないところに通う児童は、

少なくとも学校から学童まで、

子供達だけで行かねばならない。

なのに子供だけの登下校は虐待、等と言い出せば、

にっちもさっちも行かなくなる。

公立であれば登下校時、

スクールバスが送迎してくれるアメリカと、

これまた同様に考えられる環境にはない。



その状態を放置しておいて、

今回出された条例案は、

実態を知らない愚か者達が、

アメリカ等の話を聞き齧り、

そうだそうだ、日本でも!と、

スタンドプレイを狙って飛びついただけにしか見えない。


アメリカでそれが成立するのは、

ベビーシッターが社会に普及しているから、という側面もある。

もっとも、中高生がアルバイトとしてやる、という場合も多く、

ちゃんと子供を見ずに放置している事もあるので、

それはそれで危険もあるのだが。



勿論、子供だけで留守番させることが良い、とは思わない。

過去には火遊びから火事になり、

亡くなる子供がいたのも事実だ。

だからこそ、大人の目のある学童を、

必要な人が利用できるように整備すべきだし、

なんならもっと人員を増やして、

移動の時に引率をつけるくらいの事を、

自治体側がすべきだろう。

職員を増やすのは経費がかかって無理、というなら、

今は元気な高齢者が大勢いるんだから、

ボランティアを募ればいい。

この辺りも、登下校時には、

高齢者のボランティアが、

見守り隊として街頭に立って下さっている。



そういうシステムがキチンと構築されて初めて、

子供だけで留守番させずに済む世の中になる。

そこをすっ飛ばして、

悩みながら何とか工夫して、

子育てをしている共働き家庭に、

更なる負担を強いるだけの条例など、

理解を得られるはずもない。


この埼玉の自民党県議団だが、

58人のうち、

女性がたったの3人しかいない。

子育てなどしたこともない親父達が、

実態も分からずぶち上げた条例案は、

「瑕疵は無いが説明不足だった」ので取り下げたのだそうだ。


本当にそう思うのなら、

不足だったと認識している部分を、

キチンと説明して、再度提出すればいい。

だが、今後再提出する予定は無いそうだ(笑)



語るに落ちたね。

これ程全国的に反対されると思っていなかったのだろうけど、

それが分からない時点で、

県民の代表たる県議としてどうよ、という話になる。


次の選挙を睨んで、

自分達の首が危ない、事にやっと気づいたか(笑)



こんな馬鹿げた条例案ひねくり回している時間があるなら、

待機児童を減らす方法でも検討した方が、

余程県民の為になると思うけど。