5年前、聴覚障害のある当時11才の井出安優香さんが、
暴走した重機にはねられて死亡した事故で、
損害賠償における逸失利益の算定に、
聴覚障害を理由にした減額の是非が争われた裁判の地裁判決が出た。
この裁判は注目していたのだが、
余りにもガッカリな判決だった。
はっきり言って怒りしかない。
加害者側は、聴覚障害者の平均賃金が、
通常の平均賃金の6割程度であるとして、
6割で算定してきた。
それが納得いかない、と被害者両親が提訴した訳だが、
大阪地裁の武田瑞佳(みか)裁判長は、
本人の努力を認め、
様々な手段や技術を利用して、
聴覚障害の影響を小さくする事ができた、と、
平均賃金の85%で算出、とした。
全く意味が分からない。
平均賃金から減額の15%の根拠は何なのか?
裁判長の思い込みによる、
勝手な判断以外の何物でもない。
こんな中途半端な判決を出す位なら、
無くなった時点の平均賃金が6割だったから、6割で算定という方が、
まだしも根拠はある。
大体聴覚障害があるから将来の賃金が安くなる、って何?
むしろ5年前の時点で、
聴覚障害者の賃金が6割に抑えられていた事を恥じるべきだ。
もっと腹が立つのは、
6割だったところを25%も上乗せしてあげたんだから文句無いでしょ、という、
裁判長の傲慢な態度が透けて見える事だ。
だが両親が問題にしていたのは、
障害がある、というだけで、
無条件で差別されている、という事実に、だ。
だから85%であろうと、
たとえ99%であろうと、
「差別」されている以上、
両親は納得できなかっただろう。
この裁判長はテニスの国枝慎吾を知らないのか?
同世代の平均賃金より、
遥かに高所得者だと思うけど(笑)
彼は類い稀なる能力を持った、
特殊な人だから、と言うかもしれない。
だが、彼がプロになる、と言った2009年には、
障害者スポーツの選手がプロになって、
上手く行くはずがない、と、
周囲から猛反対をされた。
たった14年前には、
皆の意識はそんな物だった訳だ。
それを彼が道を切り拓き、
後に続く選手が続々と出ている。
11才だった安優香さんが25才になる14年後には、
彼女が聴覚障害者の期待の星になっていたかもしれない。
極端な話、
小説家や漫画家になって大ヒットを飛ばしたかもしれないし、
普通に働くんだって、
今や仕事の大切な話は、
聞き間違いや言った言わないがあってはいけないので、
基本、メールや文書だろう。
聴覚障害があっても、
何の齟齬も無くなっていてもおかしくない。
そもそも、少子化のせいで、
労働人口がどんどん減り続けている日本が、
まともな社会活動を維持しようと思ったら、
障害があってもどんどん働いて貰わなくてはならない。
なのにこんな判決を出していたら、
雇用者側に、障害者は安く使える、という、
間違った認識を植え付ける事になる。
この裁判長はそこまで考えてこの判決を出したのか?
原告の弁護士は、
今後どうするかは原告と相談して決める、と言っている。
だが、是非とも控訴して欲しい。
こんな悪しき前例が確定したら、
これからの社会にとって害にしかならない。
弁護士会も障害者団体も、
全力で原告の支援をして欲しい。
武田裁判長、貴女は間違ってるよ。