来年度から現在42万の出産一時金を、
大幅に増額するらしい。
そりゃ出産した人にしてみれば、
貰える金額は少しでも多い方が嬉しいだろう。
だが、金額が増えたからもう1人産もうと思うかどうかは、また別の話。
それで少子化対策になる、と、
考えている時点でズレまくりだ。
大体子供を生み育て難いのは、
お金だけの問題ではない。
勿論大きな要因の1つではあるが、
そこを解決するなら数十万では意味がない。
1億あげる、とでもいうならともかく、
42万が100万になったところで、
経済的な心配が無くなったから産もう、とはならない。
子供1人育て上げるのに、
一体幾らかかると思っているのだ?
世間知らずにも程がある。
政治家は歳費やら文書交通費やら、
手当を貰いまくって金持ちだし、
子育ては妻任せ、
何ならお手伝いさんがいるような環境だから、
庶民の苦労など分からないのだろうが。
子供が育て難い最大の理由は、
適した環境に無いからだ。
高度経済成長期のように、
給料は右肩上がり、
夫の収入だけで十分食べていけるから、
妻は専業主婦で生活が成り立った時代ならともかく、
今は若者の収入が上がらない。
小泉首相の時に派遣の全面解禁みたいな事をやらかすから、
企業がコストの低い派遣を多用し、
益々労働条件が悪くなる。
しかもいつ切られるか分からない不安定さだ。
運良く正社員になれても、
給料は上がらない。
1人産めば、最低でも18年は、
継続的にお金はかかり続け、
しかも必要費用は年々上がる。
安い賃金で自分1人食べるのがやっと、の状態で、
どうやって結婚して子供が育てられるというのだろう。
それに実際に出産、となれば、
女性ばかりに負担がかかる。
キャリアは中断し、保活もままならない。
せめて保育所位、希望者全員が安心して入れる様に準備すべきだろうに。
そこを頑張って何とか復職しても、
こどもが熱を出せば保育所から連絡があり、
早退して迎えにいかねばならないのは殆ど母親だ。
男ばかりの政治家達は、
そこを担った事など無いだろう。
今の若い人は共働きが普通だから、
我々の頃よりは育児に参加はしているだろうが、
あくまで「手伝っている」範疇にしか見えない。
そして職場の不理解。
子供が熱を出して早退する母親が、
何故肩身の狭い思いをして、
嫌みや皮肉を言われなければならない?
社会の為に、
何なら将来アンタらの年金の為に、
税金や年金を納めてくれる人を、
今身を削って育ててあげてるんですけど、って言ってやればいいのに、といつも思う。
だが残念ながら未だ男社会から脱却できない日本は、
育休明けに時短勤務を希望したり、
子供の病気で有休を取れば、
会社や同僚に迷惑をかけている、という発想から、
逃れられない人が双方に多い。
そして子供が2人になれば、
当然、病気になる確率も2倍になる。
にもかかわらず、
殆どの父親は自分が休んで看るとは言わない。
だから仕事を続けたい女性は、
2人目を諦めざるを得なかったりする。
その責任はどこにあるのだ?
産まない女性が悪いのか?
産める環境を整えられない、
男性側や社会にあるのではないのか?
初婚年齢が上がって高齢出産が増え、
不妊治療が必要な人が増えている事も、
問題の1つだ。
この4月から不妊治療が保険適用になったけれど、
全てに適用される訳ではないらしく、
適用と適用外の治療を併用すると、
全て自費治療になるそうで、
今まで出ていた助成金が出なくなった分、
負担が増えるらしい。
ただでさえ不妊治療は女性の負担が大きい。
しかも運良く妊娠しても、
それから出産までの10ヶ月、心身共に消耗する。
産後は産後で、鬱になる人も出る程、過酷だ。
そういう苦痛があっても、
何とかして子供を産もう、としてくれる人には、
費用の心配はしなくていいよ、
全部国が面倒見るから、
治療に専念して下さい、位の、
大胆な方針転換をしないと、
とても出生数が増えるとは思えない。
社会の無理解と金銭面の不安、
そこを置き去りにして、
目先の給付金だけ増やしてみても、
そんな小手先の対策で効果が上がる筈がない。
社会全体で子供を産み育てる、
そういう意識に、皆がならないと、
人口減少は止まらず、
日本の衰退は避けられないだろう。
政治も行政も国民も、
根本的な意識と制度を変えないと、
最早出生数増加に転ずるのは難しい。
政府はその事に、
いつになったら気がつくのだ?