今国会に議員立法で提出されている、
生殖補助医療法案が、可決成立する見込みらしい。
これは、どんどん技術が先行している不妊治療で、
第3者の精子や卵子を使って出産した場合の、
親と子の法的関係を民法上で定めようとする特例法案だ。
それはそれで必要な事だと思う。
年間1万人以上が精子提供等で産まれている現実があるのだから、
そういう技術が想定外だった明治時代の民法が、
いまだに放置されていた事自体がおかしかった。
むしろ遅すぎた位だ。
母親は自分のお腹で10ヶ月育てるから、
自分の卵子であろうとなかろうと、
文字通り「お腹を痛めた」子だし、
そもそも遺伝的に繋がっていなければ、
我が子と思えない、という人であれば、
卵子提供を受けてまで不妊治療をしないだろう。
問題は父親側だ。
そもそも実感や自覚が薄い人の中には、
子供が産まれてから、
我が子ではない、と言い出す父親もいるのだ。
今回の法案では、
卵子提供した人ではなく、産んだ人が母親、
第3者の精子提供に同意した夫が父親、と定義している。
出産後に拒否されて不安定な立場になる子供は、
これで減るだろう。
だがこれで全ての問題が解決する訳ではない。
この法案では、精子や卵子の提供で産まれた子供が、
遺伝的な親を知る権利が明記されていず、
それに関しては2年を目処に法整備をする、という事になっているらしい。
精子提供で産まれた人達がそれを知り、
自分の出自が分からず苦悩した事を公表して、
今、法案に盛り込むように声を挙げた。
出自が知りたい、という感情の問題だけではない。
遺伝的親が分からないと、
例えば知らずに近親婚をしてしまう危険性も出てくる。
これを書いていて、
大昔に読んだ、里中真智子の「彼方へ!」という漫画を思い出した。
親同士の再婚で兄妹になった2人が、
愛し合うようになった後で、
実は血の繋がった兄妹だったと分かる、という話だったと思う。
戸籍上は血の繋がりが無い2人は、
子供は作らない、と決めて、
2人で生きていく事を選んだ。
半世紀近く前に、こんな内容を描いていた里中女史にも驚きだが、
生殖医療によって、
知らずに近親婚に至る可能性が遥かに増している今に至るまで、
何の対策もされていなかった事にも驚く。
昔の精子提供は、医学生がアルバイト感覚でしていた事もあったようだ。
提供者の匿名性を高める為に、
複数の人の精子を混ぜて人工受精したりもしたそうだ。
だが、そうして産まれる子供がごく少数だった時代ならまだしも、
現在ではリスクはより大きくなっているし、
未知の第3者からの精子提供で産まれた、と知った人は、
ずっとその危険性を感じながら生きなければならない。
その解決の為には、
遺伝子上の親に、扶養義務等の、
通常の親の義務は無い事を明記した上で、
遺伝子上の親の特定を、子供の権利として認めるだけでいい。
勿論、不妊治療を行った医療機関には、
その情報を保持し続ける事を義務付けなければいけないが。
そしてこの問題は、
実は特別養子縁組制度も内包している。
こちらは、近親婚の禁止は、
実親の親族にも及ぶ、という事になっているらしいので、
何らかの手立てはあるのだろう。
確かにこちらは成立要件に家裁での審判が必要なので、
公文書に記録は残っているはずだ。
だがそれを知りたい、と思った人が簡単に照会し、
親を探せるかどうかは、また別の問題。
本当なら法務省なりにデータベースを作って、
折角マイナンバーを作ったのだから、
今後は紐付けして、
子供が知りたくなった時には、
生死や現住所を含めて現在の情報がすぐ手に入るのが望ましいのでは無いかと思う。
実親がどこの誰か分からないというのは、
アイデンティティーの問題でもある。
とても苦しく思う人もいるのだ。
法律を作る人は、
自分がその立場ならどう思うか、まで想像力を働かせて、
立案して欲しい、と思う。