新宿区の劇場で発生したクラスターが、
県境を越えて広がっている。

映画評論家の有村昆氏の感染発表から端を発したこのクラスター、
出演者、スタッフ、観客等の直接感染から、
家族への二次感染を含めて、
既に51人の陽性者が出ている。

その中には、長野や島根で見つかったケースがあり、
濃厚接触者は850人に及ぶというので、
まだ増えるかもしれない。


だが報道を見る限り、
感染防止策を十分取っていたとは言えないように思う。

最前列はフェイスシールドが置いてあったが、
必ずつけるように、とは言われなかったのでつけなかった、という証言もあるし、
体調不良の出演者がいた事を把握していながら、
公演を続けていた、という話もある。
主催者側の楽観的な甘い対応が、
事態を悪化させてしまったとしか思えない。


この一件の罪深いのは、
1つの舞台公演でクラスターが起きた、に止まらない事だ。

舞台のみならず、全てのイベントや公演が中止や延期になり、
緊急事態宣言解除から時間をかけて、
恐る恐る、対策をしながら、
何とか開催に舵を切ろう、とし始めた所だった。

ところが再開するなり、こういう事態になってしまうと、
また今後の開催が難しくなるし、
観客の方も行くのに二の足を踏んでしまうだろう。
幕を開けても、観てくれる人が少なければ、
やっただけ赤字になってしまう。


できることを全てやっても、
大丈夫とは言いきれないのだから、
せめて対策には万全を期すべきだった。
それでクラスターが起きたのなら、
まだ仕方ない、と思えるだろうが、
この状況だと悔いが残る。
トバッチリを喰う羽目になるかもしれない、
他の舞台の関係者にすれば、
怒りが治まらないだろう。


経済活動を回していかなければならない、のは分かる。
だが、回し続ける為には、
より慎重さを求められる事を忘れてはいけない。

せめて今回の感染者から重症化する人が出ないことと、
更なる二次感染が広まらない事を、
祈るばかりだ。