一年余りに渡って係争を続けてきた、
泉佐野市と国のふるさと納税を巡る問題が、
遂に決着した。

国の全面敗訴で(笑)

この件については、度々報道されてきたので、
ご存知の方も多いと思うが、
ちょっと整理してみよう。


ふるさと納税が始まったのは2008年。
弱小自治体は、返礼品に知恵を絞り、
少しでもお金を集めよう、と競争はヒートアップし、
総務省は、自制を求める通知を度々出した。

そんな中、泉佐野市は、アマゾンのギフト券を上乗せするなどして、
2018年度に、全国一の497億円の寄付を集めた。

これに対して2019年3月、
国は地方税法を改正し、
返礼品は寄付額の3割以下の地場産品に限る、という基準を明記した。
4月になって、18年11月に遡って寄付の手法を審査し、基準に従っていなかった自治体を除外する、と告示し、
6月に泉佐野市など4自治体を除外して、
改正された地方税法に基づいた制度を開始した。

これを不服とした泉佐野市は、
国地方係争処理委員会に審査を求め、
同委員会は、泉佐野市の訴えを一部認め、
総務省に再検討を勧告したが、国は無視。

国の態度に、泉佐野市は大阪高裁に決定取り消しを求めて提訴。
ところが今年1月、高裁は訴えを棄却する。

で、2月、泉佐野市は最高裁に上告し、
今日の逆転勝訴となる。


まあ泉佐野市がやり過ぎた感は否めないが、
あくまで当時の法に則っていたのは間違いない。
それを後から作った法に合わなかった事を理由に除外する、というのは、
明らかに法の趣旨に外れるし、
大臣の裁量権を大きく逸脱する。

にも関わらず、高裁が国の主張を認めた時は、
この国は大丈夫か!?と本当に憂慮した。

法は遡及しない、つまり制定される以前に遡って適用してはいけない、というのは、
まともな国であれば大原則だ。

事実、泉佐野市は、法律が制定された以降は、
それにそった形の返礼品にする、と明言していた。

ところが、総務省と高市大臣は、
度々の要請を聞かなかった、
つまり言うことを聞かなかったから、
対象から外す、しかもふるさと納税で多額の資金を得たのだから、
地方交付税を減額する、とやった。

これは明らかにおかしい。
ふるさと納税と地方交付税は全く別の物のはずなのに。

このやり方を認めてしまうと、
国が気に入らなければ、恣意的に地方交付税を増減できることになってしまう。

あそこの首長が国に批判的だから、とか、
極端な言い方をしてしまえば、
人間的に嫌いだから減らしてしまえ、も罷り通る事になる。

国からの要請や通知に法的根拠は無い。
だから、コロナ禍の、命に関わる局面でさえ、
自粛要請を無視したパチンコ店に対して、
「お願いをして」「名前を公表する」位しか手が無かったのだ。
まあこの件は休業補償をしなかった国も悪いが、
例えば、営業認可を取り消す、なんて事はできなかった訳だ。

ところがふるさと納税問題では、
総務省が選定権限と地方交付税を決定する権限を持っていた為に、
それを使って、客観的に見れば感情的になって報復した、としか思えない対応に出た。

これが職権濫用でなくて何だというのか。

今回、最高裁が、まともな判断をしてくれて良かった。

総務省の高市大臣は、
そもそも自分達が最初に決めてさえおけば何の問題も無かった、
ふるさと納税の返礼品に対する規定を、
決めておかなかったことを
「悪用された」とお怒りだったようだが
これは決めておかなかった方が悪い。
泉佐野市長が、何一つ違法な事はしていない、と胸を張っていたのも頷ける。

まあ違法で無ければ何をしても良いわけではないが、
今回は国のやり方の方が明らかに違法なので、
是正されて良かったと思う。


そういえば、国の主張に、
返礼品は3割以下で地場産品に、という法が公布された後も、
それに反する募集を止めなかった、というのがあったのだが、
法律は施行されなければ何の効力も無い事を知らないのか(笑)

内容を周知させる為に、
大抵の法律は公布から施行までに期間を設けている。
その間には、効力も拘束力も無いのに、
泉佐野市憎し、で、こじつけるのは如何なものか。


ともあれ、この問題は決着した。
国は国地方係争処理委員会の勧告を受け入れておけば、
最高裁にバッサリ切られる恥をかかなくて済んだのにね(笑)

地方自治や地方分権、という観点からも、
地方自治体は国の下にあり、
何でも言うことは聞かなくてはならない、
のではなく、
対等の立場であり、
おかしい事はおかしい、と言える、と証明できて良かった。

これが民主主義なのだ。
どこぞの独裁国家とは違い、
三権分立が機能して、
司法が行政におもねる事無く、
はっきり物を言える、この国の民主主義を、
何としてでも守っていかなければならない、と思う。


泉佐野市は、地方交付税減額についても裁判を起こしており、
こちらは今後審理される事になるだろう。
引き続き、その行方を注視したい。