「愛と殺意」(1950年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ミケランジェロ・アントニオーニ監督によるイタリアのドラマ映画。出演はマッシモ・ジロッティ、ルチア・ボゼー、ジーノ・ロッシ。

 

 

<あらすじ>

 

実業家エンリコ・フォンターナには若くて美しい妻パオラがいた。ところがエンリコは彼女の古い写真を見て疑いを抱き、妻の過去について私立探偵のカルロニを使い調べさせた。

 

過去を調べるために訪れたフェラーラの街で、かつての友人の夫に話を聞くと、パオラは地元のグイド・ガローニと大恋愛していたが、グイドはパオラの親友ジョヴァンナ・カルリーニと結婚。ジョバンナは結婚後すぐにアパートのエレベーターで謎の転落死を遂げていた。カルロニが事件を捜査しているとの噂は、グイドに伝えられた。

 

グイドはパオラに誰かが過去の事件を調べていると教えた。ふたりはそのことに怯え、頻繁に顔を合わせるようになる。

 

カルロニの調査は進む。事件当日、パオラとグイドはジョバンナの近くにおり、転落死を間近で知ったが、驚く様子がなかった。その2日後、パオラは失踪してエンリコと出会い結婚した。グイドはパオラのもうひとりの親友だったマティルデと結婚した。

 

元々恋人同士だったパオラとグイドは、やがて肉体関係になる。パオラは上手くいっていないグイドの事業に金を出すが失敗。愛のない結婚をしたパオラは、グイドに夫殺しを持ち掛ける。グイドは銃を用意して、運河沿いでエンリコ・フォンターナを待った。

 

カルロニからの報告を受けたエンリコは、急いで自宅へ戻る。運河に差し掛かったとき、彼は事故を起こして死んだ。警察は妻のパオラに事故の剣を伝えようと訪問した。するとパオラは自分を捕まえに来たと勘違いして逃げてしまった。

 

グイドと合流したパオラは、自分はもう終わりだと嘆いた。そしてグイドに助けを求めた。グイドは明日会おうと約束するが、そのままタクシーを駅に向かわせて逃げた。

 

<雑感>

 

責任感というものがまったくない美しい男女の話。あるいは、パオラという美しい性悪女についての話。

 

グイドが、パオラとジョバンナの話を妻のマティルデにしたとき、マティルデの態度はパオラの昔の親友とは思えないほどそっけなく、グイドに対しても冷たかった。マティルデは、パオラという女が顔だけのろくでなしだと知っていたのだ。

 

グイドは、過去の事件のことでパオラを訪ね、その美しさに惹かれて情事を重ねるが、突然夫殺しを依頼して来たり、過去の事件についてすべてをグイドのせいにするなど身勝手な行動をすることから、パオラの本性を思い出す。

 

この女はエンリコ殺しも全部自分のせいにするに違いない。そう考えると、こんな女のために殺人を犯すのかと発砲を躊躇う。だが、エンリコは勢い余って事故死してしまう。そこでグイドはパオラを試す。「あれは事故死だが、発砲で受けたような傷があった。自分たちは疑われる。どうする?」と。

 

パオラは何一つまともな提案をせず、グイドにすがるばかり。そこでグイドは、妻のマティルデ同様パオラの本性を思い出す。この女は顔だけの女だと。グイドはまた明日会おうと約束したまま、パオラを放置して駅に向かってタクシーを走らせる。

 

すべては、パオラという顔がいいだけの女が、周囲をどんどん不幸にしながら、自分は悪くないとの態度を崩さないことから来る。

 

☆4.4。ひとりの女の描き方として完璧。パオラを必要以上に美しく撮影していた理由が最後で判明する仕組みだ。