「牝犬」(1931年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジャン・ルノワール監督によるフランスのコメディ映画。出演はミシェル・シモン、ジャニー・マレーズ、ジョルジュ・フラマン。

 

 

<あらすじ>

 

冴えない中年男モーリス・ルグランは、妻のアデルと悲惨な結婚生活を送っていた。本来の彼は画家志望であったが、才能に乏しく、会社勤めをしながら、週末だけは絵を描いて過ごしたいと願っていた。

 

会社のパーティーに嫌々参加した彼は、そこでアンドレ・“デデ”・ジョガンという男が、ルシエンヌ・“ルル”・ペルティエという女性を殴っている場面に遭遇した。モーリスはルルを助け、自宅に招き入れる。売春婦のルルは、ポン引きのデデに殴られていただけなのだが、モーリスが世間知らずと見るや、ルルは彼を騙して自分のためにアパートを借りさせた。

 

ルルの美しさに参ってしまったモーリスは、彼女を愛人のように囲い、金を貢ぎ続けた。モーリスはルルをモデルに絵を描いたが、妻がいるので絵はルルに捨てるよう頼んだ。ルルはそれをデデに託した。デデは絵を画商に売りつけ、ルルをクララ・ウッドという画家だとウソをついた。

 

そんなおり、モーリスは戦争で死んだはずの妻の夫が生きていることを知り、元夫に妻を押し付けて自由の身となる。これでルルと結婚できると喜び勇んだのもつかの間、彼はデデがルルの愛人であることを見せつけられてしまった。

 

翌日、モーリスはルルと話し合いを持とうとするが、ルルは開き直ってモーリスをバカにし続けた。怒った彼はルルを刺殺した。その遺体はデデにより発見された。警察はモーリスとデデを重要参考人とするが、会計係のモーリスとヒモのデデでは社会的な信用度が違った。

 

高慢なデデはやることがすべて裏目に出て死刑判決を受ける。一方のモーリスも会計係としての品性を疑われて失業。戻る家庭もない彼は、そのまま浮浪者となった。

 

<雑感>

 

女性経験に乏しい誠実なだけの男が、売春婦に入れ込んで人生を破滅させてしまうのはよくあることだろう。そういう類型的な話ではあるのだが、女を利用しているだけの男も、女に利用されているだけの男も、どちらも不幸になっているところが面白い点だ。

 

対比関係は、デデとモーリスにある。愛される男と、愛されない男。両者に共通するのは、不幸にする女。この構図がしっかりしているので、3分の1が退屈な裁判シーンでもそれほど苦痛にはならなかった。

 

☆3.2。売春婦なんぞに関わって幸せになる話もどうかと思うので、なんだか妙に納得した。