「魔術 Wo kein Schatten fällt」(2018年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

エスター・ビアラス監督によるドイツのホラー映画。出演はヴァレリー・ストール、ミレナ・ツァルンケ、サーシャ・アレクサンダー・ゲルサック。

 

 

<あらすじ>

 

ハナは寄宿学校で過ごしたのち、長期休暇を利用して実家に帰ってきた。屠殺の仕事をしている実家の手伝いをしながら過ごす。田舎の人間は、失踪した彼女の母が魔女だと信じており、彼女は嫌な思いをさせられる。

 

失踪したハナの母のドレスが見つかった沼では、3人の男の遺体が見つかっていた。それで、魔女である彼女が男を誘惑して殺したとの噂が立っていたのだ。噂はハナの身にも及んだ。父親は娘を村人から守ろうとするが、件の沼で人が死んで、ハナも魔女ではないかと疑われるようになった。

 

不可解な出来事が起こり、鼻血を出すようになったハナは家にいることが多くなったが、近所でエバという女性と出会った。エバの影響で自信をつけたハナは、パーティーに出掛け、男性と付き合うようになったが、魔女と寝たと噂を立てられショックを受ける。

 

ハナは誘拐され、侮辱を受ける。そこで男から聞いた話で、ハナはエバが魔女だと気づいた。エバのことを訴えるものの男は聞く耳を持たず、ハナを殴りつけた。

 

目を覚ますと自宅の農場にいた。誘拐した男はクレーンで釣りあげられ殺されている。ハナの父は、すべてを告白する。ハナの母が、沼で水浴びしているところを男たちが襲いかかり、強姦したのだ。それを知った父が、男たちを殺した。父親は警察に自首した。

 

それでは納得がいないハナは、エバの母親の家に向かう。そこでエバと対峙したハナは、エバは実在せず、ハナの心の中にいる魔女なのだと知る。エバは彼女の救世主でも友人でもなく、もうひとりの自分だったのだ。エバの母の家、それは彼女の隠れ家だった。男が閉じ込められていたが、それもハナがやったことだった。

 

ハナはエバを殺し、自分自身になった。閉じ込めていた男は解放した。そこに彼女を助けに農場で働く男がやってきた。ハナは彼も撃ち殺し、村を出ていく。

 

<雑感>

 

ドイツのテレビ映画。心の中にある悪を描いた作品。ではあるのだが、どうにも中途半端な作品だった。

 

ハナの母は沐浴中に襲われ、強姦された後で殺された。映像が残っているのでそういうことになっているが、なんというか、浮気していた可能性もあって、事実として提示された情報が間違っているかもしれない。ハナも、母親も、自分の人生に不満があってそれを解消しようとしているからだ。

 

男が悪い、女は被害者、だから女は男に暴力を振るってもいいと、おかしな思想が垣間見える。もうちょっと物語としての面白さを追求すべきだったのではないか。

 

閉じ込められていた男は、ハナとセックスして笑いものにした男なので、ハナがそれに復讐するところで観客にカタルシスを与えなければいけないのに、エバを殺したハナは男をそのまま逃がすし、男は復讐のために小屋を燃やすし、ハナは助けに来た男を殺すし、話にまとまりがないのだ。

 

善と悪が心の中にあるとわかったのち、ハナが生き残ったならハナはもっと善に傾かねば分かりにくい。ハナとエバが一つになったのなら、善と悪が自分の中にあることをハナが自覚しなければならない。エバになったのなら、エバが死ぬシーンは不必要だ。

 

☆3.0。もっとしっかり思想的に固めてから何かを主張してもらいたいものだ。