「嫉妬」(1953年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ピエトロ・ジェルミ監督によるイタリアのドラマ映画。出演はマリーザ・ベリ、エルノ・クリサ、アレッサンドロ・フェルセン。

 

 

<あらすじ>

 

アントニオ・ロッカヴェルディナ侯爵の土地の管理人ロッコは、美しい村の娘アグリッピナ・ソルモと結婚した。ところが彼は銃撃を受け死んでしまった。警察はネリ・カサッチョを逮捕して裁判にかける。ネリは懲役30年の有罪判決を受けた。

 

だが、銃撃したのはロッカヴェルディナ侯爵自身だった。彼はアグリッピナを愛人にしており、ロッコを使って偽装結婚させていたのだ。いざ殺したものの良心の呵責に耐えられなくなった侯爵は、教会で告解し、ロッコ殺害を神父に話してしまった。

 

神は不正は許さないと返された侯爵は、キリストの像を片付けさせ、さらに精神を病んで倒れてしまった。それを助けたのがゾシマであった。侯爵はゾシマと結婚してしまう。裏切られたアグリッピナは悲嘆に暮れるしかなかった。

 

ところが侯爵はアグリッピナのことが忘れられない。貧しい修道女となった彼女に会い、浮気をしてしまう。そこにネリが脱走したとの知らせが舞い込む。ネリは真相を知る神父のところに駆け込む。神父は思い悩んで侯爵に相談を持ち掛けた。

 

ネリは子供に会うために銃を持ち自宅へと向かった。張り込んでいた警官隊が彼を銃撃する。ネリは愛する娘と侯爵の目の前で撃たれ、死んでしまう。

 

精神を病んだ侯爵は余命いくばくもないと宣告される。心配になったアグリッピナは窓の外から侯爵を見守る。それを見つけたゾシマは、彼女が侯爵の愛人だったと知りながら、屋敷の中に招き入れた。彼女の姿を見た瞬間、アントニオ・ロッカヴェルディナ侯爵は死んでしまった。

 

<雑感>

 

ドラマの盛り上げ方が素晴らしい。侯爵は信心深い人間だったらしく、屋敷に大きなキリスト像を飾っていたのだが、キリストの視線に耐えられなくなってそれを取り外し、教会に寄付してしまう。その神の視線に怯える姿勢が、物語を盛り上げることに使われているのだ。

 

どんな宗教を扱った内容よりもよほど神とか宗教の本質に迫った使い方だったと思う。侯爵が村の娘に惚れたとか、身分違いで結婚できないために使用人と偽装結婚させて彼を殺し、永遠に領地に匿おうとしていたとか、そこまでさせておいて結局は裏切ったとか、そういうことはこの作品ではたいしたことではない。

 

侯爵は神を裏切り、神の視線に怯え、神に見捨てられて死んだ。侯爵と神との関係性だけがこの作品の本質である。

 

☆4.8。神からいつも見られている緊張感が、宗教の本質。それを上手く描いている。