「ある女の愛」(1953年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジャン・グレミヨン監督によるフランス・イタリアのドラマ映画。出演はミシュリーヌ・プレール、マッシモ・ジロッティ、ギャビー・モルレー。

 

 

<あらすじ>

 

マリー・プリウールはフランスのある島に新任医師として赴任してきた。忙しく働く毎日。初めは女医であることでからかわれもしたが、彼女は徐々に島の人間の信頼を得ていく。

 

そこに、橋の建設のために技師アンドレ・ジャノがやってきた。惹かれ合うふたりのことは、島でたちまち噂になった。アンドレは彼女に医者をやめて結婚してくれと迫る。マリーは医師としての誇りからその申し出を受けることができない。

 

マリーは心苦しさから、島を離れて別の場所で医者を続けようとする。アンドレにはマリーの行動が理解できない。自分を避けるためにそこまでするのかと怒ってしまった。だがそのアンドレも、橋が完成すれば島を去っていくのだ。残された時間はわずかで、決断はマリーに委ねられている。

 

橋が完成して、アンドレが島を去る日がやってきた。

 

マリーの部屋にはアンドレが忘れていったライターが置いてある。それを送り届けることを言い訳に、会いに行くことができる。マリーは走り出そうとしたが、そこに新任の女性教師が訪ねてきた。島での生活に不安を訴える彼女を置き去りにするわけにはいかず、マリーはついにアンドレに会うことができなかった。

 

<雑感>

 

女性がキャリアと結婚を両立できなかった時代の話。マリーは有能な医師で、島の人間から頼りにされるし、都会の病院で働くこともできる。島では孤独なので、都会の病院に移ることを考えていた。

 

彼女が頼りにした島の女性教師は、ついに結婚できずに島で死んでしまう。これがマリーに心を揺るがせる。医者をやめてアンドレと結婚すべきではないかと。そのアンドレも、結婚してほしいが、マリーのキャリアを自分のためにフイにしていいのかと思い悩む。結局ふたりは結論を出せないまま別れてしまうのだが、若い新任女性教師はすでに結婚が決まっているのだと自慢げに話す。

 

ここの構造が面白い。

 

島で独身のまま死んでいった老女性教師の時代は、働く女性は独身を貫くのが当たり前だった。マリーの時代は、古い価値観と新しい価値観がせめぎ合っている。そして若い新任教師の時代になると、働きながら家庭を持つことが当たり前になっているのだ。この3世代を描くことで、時代の移り変わりを端的に表現している。

 

☆4.0。単なる恋愛映画ではない。そこがいい。