「イチケイのカラス」(2023年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

田中亮監督による日本のドラマ映画。出演は竹野内豊、黒木華、斎藤工。

 

 

<あらすじ>

 

海上自衛隊のイージス艦と民間貨物船の衝突事故が発生した。民間船の船長島谷の妻加奈子が、防衛大臣を襲撃する事件が起こる。裁判官の入間みちおは、この事件の公判を担当することになった。ところが防衛大臣と面会したことで、担当を外されてしまった。

 

健康被害裁判の担当になった入間は、被告側企業が衝突事件の民間船であることから徹底した調査を行い、国が主張し、傷害事件のきっかけとなった「民間船による航行ルート逸脱」の原因が、汚染土の運搬のためだったと見抜く。会社は、健康被害を出していた汚染物質を含んだ土を、秘密裏に無人島に運ぼうとしたため、航行ルートから外れたのだった。

 

そして事件を隠蔽していたのは会社だけではなく、工場に依存する町全体で、町民もそれに加担していたことが明らかになる。そして防衛省側も、新型ミサイルのテストのために、大臣をイージス艦に乗せていた。大臣は、日本の防衛を遅らせないために隠蔽したことを明らかにしていく。

 

工場の汚染土の問題のために、多くの人間が命を落とし、ウソをついた。大臣は辞任し、町の汚名は広く知れ渡った。

 

<雑感>

 

漫画原作で、テレビドラマ化されたものの劇場版。ドラマをあまり見ないから、こういうのが一番困るんだよな。事件はこの作品単体でわかる内容であっても、人間関係を理解できない。

 

内容は企業城下町ならではの苦悩を扱ったもので、政治的な偏りはほぼなくて、工場の汚染土の問題もわざとじゃないし、隠蔽はいけないといっても、マスゴミの暴力に晒されればと考えると隠蔽という道を選ぶのもわかる。

 

ちょうどそのとき、防衛上やむを得ないテストがあり、偶然が重なってすべてが明るみに出てしまうのも運命を感じる。どっちが悪いと決めつけることもなく、とにかくみなが納得する道を探っていこうとする終わり方も良い。

 

☆3.8。総じて好きなタイプの作品。