「星の旅人たち」(2010年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

エミリオ・エステヴェス監督によるアメリカ・スペインのコメディ映画。出演はマーティン・シーン、デボラ・カーラ・アンガー、ジェームズ・ネスビット。

 

 

<あらすじ>

 

眼科医のトーマスには、ダニエルというひとり息子がいたが、妻と死別してから疎遠となっており、トーマスは世界中を旅行しているらしく、ときおり無事を知らせる連絡が届いていた。ある日のこと、警察からダニエルが死んだとの連絡があった。

 

遺体を確認し、ダニエルの遺品を受け取る。ダニエルは、800kmを徒歩で歩く聖地巡礼の途中で死亡したらしい。遺品の中にあった聖地のスタンプを見たトーマスは、息子のリュックと遺品を持って残りの巡礼を自分の脚でやろうと決めた。

 

さっそく旅立つ彼。聖地までは790キロもある。巡礼仲間数人と知り合い、一緒に旅を続けるトーマス。60歳を過ぎた彼には大変な旅程であった。喧嘩をし、警察に捕まりながら、仲間との旅は続く。途中でトーマスは、ダニエルの遺品のバックと彼の遺灰を盗まれてしまう。

 

盗んだのはジプシーの子供で、バックと遺灰は何とか戻ってきた。旅の終わり近く、トーマスは仲間たちを豪華ホテルに泊める。それぞれに部屋を与えたのに、貧乏旅行が身に付いた4人は同じ部屋に集まってしまう。4人は最後まで一緒に旅を続け、旅の楽しさを知ったトーマスは、息子と同じバックパッカーとなって世界中を回るようになった。

 

<雑感>

 

トーマスは眼科医のエリートで、お金もあり、巡礼するような性格でもなかった。妻が死んでしまっても彼の生活や日常は変わらず、というより変えられない。医者なのだから当然だ。

 

息子が死んで、本当に独りになってしまい、息子がやっていたとおぼしき「自分探し」を息子の代わりにやろうという気になる。そして、自分が見つかったのかどうかはわからないが、息子が選んだ生き方の魅力を知る。

 

価値観が変わると、絶対に必要だと信じていた豪邸生活や高級車が無価値なものに思えてくる。元気な身体、気力に満ちた精神、なんでも食べられる健啖。そんなものが豪邸生活に取って代わる。ああ、息子も同じことを感じたのだなと思っていられる。

 

トーマスは自分を発見したのか、息子を理解したのか、それには答えが出ないまま旅を続ける。そんな余韻のある作品でした。

 

☆4.0。月の半ばに、なかなかいい作品が数作追加された。