シルヴィオ・アマディオ監督によるイタリアのエロサスペンス映画。出演はジェニー・タンブリ、シルヴァーノ・トランキーリ、ロサルバ・ネリ。
<あらすじ>
長年寄宿舎で生活してきたナンシー・トンプソンは、母ドロシーの死を知らされて実家に戻った。彼女は母の2番目の夫の子であり、いずれ屋敷を相続することになっていた。ところがそこには、見知らぬカメラマンのジャンナが住み着いていた。地下室を借りているのだという。
ジャンナの傍にはマルコがいた。彼はドロシーの夫で、没落貴族であった。ドロシーの遺産を管理しているのは彼だった。孤独に育ったナンシーは、マルコとジャンナを家族のように慕うようになった。ところが、湖でナンシーが溺れかけてもマルコは助けず、不信感を持ったナンシーはふたりを疑い始めた。
家政婦のマグダに話を聞くと、警察は自殺と断定したが、信じていないという。ナンシーはふたりに探りを入れるためにわざと肉体関係を持った。
ジャンナとマルコは、以前から肉体関係になった。それを知ったドロシーはジャンナを侮辱し、怒ったジャンナに殺されていた。ジャンナはマルコに相談して、ナンシーを呼び寄せて始末し、ドロシーの有り余る財産を奪おうとしていた。ナンシーを殺すのはマルコの役目だった。
ナンシーは、ジャンナに対してはマルコが自分を殺そうとしていると吹き込み、マルコに対してはジャンナに殺されそうになっていると信じ込ませた。
マグダはドロシーが生前に書いたままナンシーに出すことができなかった手紙を発見してナンシーに読ませた。これに脅威を抱いたジャンナとマルコは、共謀してマグダを殺した。ふたりはそのままナンシーを殺そうとする。マルコは一酸化炭素中毒でナンシーが自殺したかのように工作をしていく。
ところがジャンナが裏切り、マルコはガレージの中で死にかけた。ジャンナはナンシーと一緒に財産を持って逃げるつもりだった。ところがここに、ドロシーの愛人だった若者がやって来る。彼は、ナンシーの恋人で、屋敷のことを探るためにドロシーに近づいたのだった。
ナンシーと男は、屋敷を相続するつもりはなく、殺しの証拠を突き付けてジャンナとマルコから大金を奪った。そしてバイクで逃げようとしたとき、タクシーにぶつかってふたりとも死んでしまった。ぶつかったタクシーに乗っていたのは、本物のナンシーだった。
<雑感>
あまり情報のない作品だったので、あらすじは詳しく書いておいた。映画の情報ってこの世に数限りなくあるものだけど、たまに日本ではマイナーな作品がある。そういうのに当たったときは、義務的に詳しくあらすじを書くようにしている。
作品の見どころは、「ちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅちゅ」が繰り返される変なBGMと、ナンシー(実はナンシーじゃないと最後にわかる)役の女優の裸である。ナンシーは何かというとすぐに脱ぐキャラで、それで中年のマルコや、若干レズビアンの気があるジャンナを誘惑していく。
ナンシーは、寄宿舎育ちということになっているので、ウブそうな顔をして実はしたたかな女なんだな、苦労したからそうなったのかな、と観客に想像させ、ほぼ最後まで彼女が偽物のナンシーだということは隠し通している。
母親のドロシーの愛人だった男が最後に登場し、それがナンシーの恋人だと判明して、かなりしたたかな女だったと驚くのだが、そのふたりがサイドカー付きのバイクで逃走。直後に事故で死んだあと、タクシーを降りてくる少女が本物のナンシーだと気づいたとき、かなり驚くことになる。
本物のナンシーは、そうであるとは明示されていない。しかし、ドロシーの屋敷に向かっていること、いかにも寄宿舎育ちのお嬢様然とした姿から、ああこれが本物で、ナンシーだと信じてやってきた女は偽物だったと気づくのだ。寄宿舎育ちのお嬢様が、あんなポンポン裸になるはずがないと。裸になることが伏線になっているのである。
偽物のナンシーは、自分の男が金持ちの女ドロシーに近づいたことで、何とか金にしようと考えた。だが、ドロシーは殺されてしまう。金脈が尽きたかに思われたが、ナンシーという家政婦ですら会ったこともない相続人がいることを聞いていたので、女が身代わりとなって家に潜り込む。男は事前に、ナンシーの写真を処分して顔がわからないようにしてあった。
つまり、ちゅちゅちゅが繰り返されるへんてこなBGMと、ナンシーの裸にまんまと騙されるのだ。面白い演出だと思う。
☆4.3。ただ女の裸が出てくるだけなら、こんな高評価にはならない。それが伏線だから驚きがあるのだ。最後に顔を出す本物のナンシーはかなり美人である。