「⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎」(2023年作品)感想 | 深層昭和帯

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原作:水木しげる、監督:古賀豪、制作:東映アニメーション。

 

 

<あらすじ>

 

戦後に復員し、東京で働いていた水木は、取引先の龍賀時貞が亡くなった知らせを受け、哭倉村まで弔問に向かった。ところが葬儀が終わって間もなく、次期当主に指名された長男が殺された。容疑者として捕らえられたのはゲゲ郎という風変わりな男だった。

 

水木は、ゲゲ郎の監視役にされてしまった。話を聞くと彼は幽霊族だと名乗り、妻を探してこの村にやってきたのだという。ゲゲ郎はあっさり脱獄し、立ち入り禁止になっている浮島の穴倉に入った。そこには妖怪がうごめいていた。その妖怪たちこそ、水木の真の目的、龍賀一族が開発した血液製剤Mの秘密だった。

 

龍賀一族は、幽霊族の血液を人間の体に入れ、何日も飲まず食わずで過ごせる血液製剤を作り出していたのだ。そのころ、龍賀一族の次女が殺される。長女の沙代は怯え、東京に連れて行ってくれと水木に泣きついた。水木は龍賀一族の秘密を見返りに要求する。

 

事態を悟られ、ゲゲ郎だけでなく、水木も何者かの襲撃を受ける。しかも、沙代も敵であった。水木は妖怪たちの攻撃を受け、龍賀一族が妖怪を操ることを知る。ところが沙代もまた陰陽師の長田に殺されてしまう。妖怪を操っている原因が壺だと見抜いた水木がそれを破壊すると、孫の身体を使って妖怪を操っていた龍賀時貞も妖怪に飲み込まれてしまう。

 

解放されたゲゲ郎は、妻とともに朽ち果てた。その亡骸を水木が埋葬すると、土の下から産声が聞こえた。幽霊族のゲゲ郎の妻は、死んでなお出産したのだった。水木はその子を育てる決心をする。そして、ゲゲ郎の朽ちた身体から目玉がこぼれ落ち、目玉の親父となった。

 

<雑感>

 

評判を聞きつけて昨日嫁と劇場で鑑賞した。「墓場鬼太郎」の前日譚に当たるのであろう。これがなかなか重い内容であった。

 

鬼太郎の父(目玉おやじ)が昔のことを回想する体裁になっており、鬼太郎の母(幽霊族)を探している形だ。そこにのちに作者となる水木が絡んできて、横溝正史のような世界観の中で、因果の始まりが物語れている。

 

アニメ「墓場鬼太郎」は、原作準拠の独特の絵柄が好き嫌いが分かれるところであったろうが、この作品は現代風というのか、最近の鬼太郎の絵柄で、「墓場鬼太郎」みたいな重々しい話をやっているから、何とも不思議な感覚になる。

 

子供向けの絵柄で大人向けの内容になっていて、ラストは苦しくて泣ける。爽快感のある終わり方ではないかもしれないが、かなり好きな物語である。このところ、日本の劇場アニメの質は上がりっぱなしだ。これも傑作と言っていいだろう。

 

☆5.0。テレビシリーズ第6期の劇場版なのだそうだ。見てみたくなったよ。