「終身犯」(1962年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジョン・フランケンハイマー監督によるアメリカのドラマ映画。出演はバート・ランカスター、カール・マルデン、セルマ・リッター。

 

 

<あらすじ>

 

ロバート・ストラウドは恋人を強姦した男を殺害し、さらに刑務所でも事件を起こして別の監獄に移送された。彼はそこで遠方訪ねてきた母を追い返した看守を殺す。絞首刑が宣告されるものの、母の必死の懇願で終身刑に減刑が決まった。

 

独房の中で小鳥を介抱したことから鳥に関心が芽生え、独学で鳥類の勉学を始める。カナリヤの熱病を治す画期的な方法を発見して論文を発表。彼は終身刑でありながら鳥類の権威へと昇り詰める。そんな彼を支援するために、独房で鳥を飼う許可が与えられた。

 

そこに、鳥類愛好家のステラ・ジョンソンという女性が訪ねてきた。ふたりは意気投合するが、またしても看守の横槍が入り、鳥を飼うことが禁止されてしまった。ステラは世論を喚起するためにロバートと獄中結婚をすることに。だがこれも握り潰されてしまう。

 

アルカトラス刑務所に送られたロバートは、そこで法律を勉強して法を無視する看守たちと敵対したが、彼はあくまで冷静で、獄中にある荒くれ者たちとは一線を画していた。その冷静な態度が認められ、彼は終身刑ながら小鳥を飼うことを許されるのだった。

 

<雑感>

 

吹替え版で視聴。やはりところどころ吹き替えのないシーンがある。テレビ放送の際に吹替え版を作ったものの、カットされたシーンは録音されず、こうした形になっている。テレビ版の吹き替えをDVDや配信などで見るとたまにこういうことがある。特撮ドラマでもたまにあったな。

 

これも興味深い作品で、悪を許せない男が正当防衛的な暴力で人を何度も殺めてしまい、凶悪犯として終身刑を言い渡されるが、真面目で観察眼に優れているためにどんどん勉強が捗り、いわゆる「完成可能性」を発現させる。人間は、たとえ終身刑を言い渡されるような人間であっても、「完成可能性」を内包しているものだというリベラル特有の考えが透けて見える。

 

死刑反対というリベラルの主張の根底にあるのが「完成可能性」であり、この作品はロバートのことを描いているのではなく、思想や政治主張を他者に認めさせるために作られていると見抜かねばならない。そこをパッと掴めない人間がリベラルに騙されるのだ。

 

☆3.0。「完成可能性」の有無など、外からは観察されないのだから、犯した罪に対して罰を受けるしかない。